第3話処刑実施
ダンケル公爵は、いや、ダンケル公爵家の一族一門は、この日を一日千秋の思いで待ち続けていたのだ。
ダンケル公爵家とは、この世界に生き残っている魔族の仮初の姿だ。
彼らは再び魔族をこの世界に呼び寄せようとしていた。
遥か古の昔、神々と魔族が存亡をかけて戦った時代があった。
この世界に誕生した神々と、異世界からやってきた異界の神の戦いだった。
異界の神が、この世界を侵略しようとして始めた戦いが、歴史に残る神々と魔族の戦いなのだ。
その異世界の神が使った、この世界に通じる道が、悪魔の処刑台によって封印された場所にある、ダンジョンだったのだ。
そのダンジョンを再度使用するためには、神々が封じた悪魔の処刑台を破壊する必要があるのだが、ダンケル公爵を名乗る魔族にその力はなかった。
力のない魔族だったからこそ、神々の眼から逃れる事ができたのだ。
ならばどうやって悪魔の処刑台を破壊できるのか、ダンケル公爵家を名乗る魔族たちは長年研究を続け、ようやくその回答を得たのだ。
その方法とは、悪魔の処刑台の上で、神々の選んだ聖女を処刑する事だった。
最初は魔族の通路を封印するために創り出した悪魔の処刑台だったが、後に別の役割も与えられたのだ。
神々の手先となった人間達が、普通では人間が殺せない魔族を殺せるようにするために、神々が人間の為に悪魔の処刑台を改良したのだ。
神々では見つける事のできない力の弱い魔族を、人間に探し出させて処刑させ、その血と魂で封印を強化する改良だった。
だが、その他の力も、神々は付与していた。
聖女クラリスは、情け容赦のない荒々しい扱いで、悪魔の処刑台に引きずりあげられようとしているが、その役目は王太子の私兵が行った。
悪魔の血を引くダンケル公爵家の者達は、悪魔の処刑台に近づく事ができない。
不用意に近づいてしまうと、人間に変化している魔術が破られてしまって、魔族に正体が露見してしまうのだ。
「なにをクズグズしているのだ、さっさとやらないか!」
だが、流石に、幾ら愚かで残虐非道な王太子の私兵と言えども、悪魔の処刑台の伝説くらいは聞いた事があり、そこに聖女を引きずりあげるのは恐ろしい。
神々が悪魔を処刑するために創りだした処刑台に、聖女を引きずり上げたくない。
人の心や命は平気で踏みにじるが、自分の命は惜しいのだ。
王太子の私兵達は、互いにその役目を同僚に押し付けようとした。
(クラリス、急いで一人で悪魔の処刑台に登りなさい)
不意にクラリスに神々のお言葉が届いた。
それからのクラリスはただ無我夢中だった。
誰も巻き込まないように、慌て騒ぐ事なく、運命を受け入れるつもりだったクラリスだが、神々が逃げろちうのなら、全力で逃げなければいけないと思ったのだ。
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