第13話 ナカ国


ギョイーーン


ギョイーーン




次々と大空へと飛び立っていく新型無人戦闘機。




荒ぶるような電気的スキュール音をたてながら…


数は、数百~千いくらか、いやもっと飛び立ったのかも知れない。


ここは、ナカ国、丸建省。地下トンネルに見せかけた、ある軍事施設の滑走路。




日本帝国の東京を壊滅させる為の大規模な作戦が今まさに始まろうとしていた。




新型無人機、進化したAIにより制御された、次世代の兵器と思われる。


TX200型ギャラックス無人戦闘機。


コイツの本体には、一般武装の他に一機一機その機体が、小型核弾頭になっている。




こいつを1,000機以上出しての作戦となると、これはもはや、脅しでも何でもなくJUNAの本体が置かれる東京はおろか日本帝国の国土を全て焼き払うほどのTNT換算となるだろう。


未知の兵器JUNAに対する総攻撃。


ナカ国側の覚悟のほどもうかがえる。




「計画段階からみーんなみえてるんだからねぇ~」


「し~~」




★★




「恭介、そろそろ先頭の機体が、安全海域に出るから・・いくわ!」




「了解、今回は、恐らく誰も死なないだろうね!無人機だけに」




上空10万メートルの光帝専用機から純菜さんがライトボディで降下する。




「そうね、じゃあ、ものわかりの悪いナカ国の首脳陣に、ちょっとだけ、あたしの本気を見せてあげましょう。」




「へっ、今までのは、本気じゃなかったの?」




「あたり前じゃん。あたし、こう見えて女神だよ。腐っても神様なんだからね。」




「へいへい。じゃあ、しっかり全世界LIVEにしておきますね。」




「いくよ!」




そう言った途端んに純菜さんは、ギャラックスの編隊の目の前に純菜そのままのボディで降臨した。パイロットが、搭乗していたら驚いて何機か墜落していただろうに。




ギャラックスも動揺する事もなく瞬時にロックオンから理想的な攻撃を展開する。同士討ちを避けたフォーメーションへの移動も素早く美しいラインを描いた、流石は次々世代のAI戦闘機ってところだ。




しかし、光の体を持つ純菜さんにしてみれば、物理攻撃はもはや攻撃でも何でもない。でも・・


良く見ると、いつもと・・衣装が違うんか?




「ええええええ!」




「ウフフ、いくわよっ」




あ、あれは・・


魔女っ子のコスプレ衣装に魔法のステッキ!


超笑顔で、ウインクしながらステッキを振る魔女っ娘純菜さん。




「はい、はい、はい、はい!」




なんと、純菜さんの掛け声と同時に


日本古来のキャラクターが、空間に溢れ出す。




キティちゃん、メロディーちゃん、キキララちゃん。


ギャラックスのカメラの向こうのおっさん達は、ずっこけたかも・・


もしくは、震えあがった事だと、お察します。




「それ、ホログラムじゃないの?流れ弾大丈夫?」




「光分解して、組み直すのよ」




「はぁ~。もう、人間の理解を超えてるぞ~」




「まあ、見てなさい~」




音速で飛んでくる銃弾も、ミサイルも・・


キティちゃん、メロディーちゃん、キキララちゃんが、口を開けて美味しそうに食べている。この光景は、僕の期待をも遥かに越えている。とんでもない、戦闘風景だ。




「えい、えい、えい、えいっ」




純菜さんが、ステッキを振る度に、キラキラした星が無数に飛び出して、サン●オのカワイイキャラクターに変化する・・そして、弾丸もミサイルも核武装した機体までもを、パクパク可愛く食べていった。




半分以上食べたかな?って時に、悪魔のような閃光がさす。


自爆?っと思った瞬間に、空間が虹色掛り全てが停止した。




「これ、やると思ったの」




「純菜さ~ん、大丈夫?」




「うん、湾岸の人達が、巻き込まそうだから・・」




「巻き込まれそうだから・・何?きこえないよ~」




「時間を停止したのよ」




「え、そんなのも・・で、できるんですかあ?」




「まあね。今動けるのはあたしと、恭介だけよ」




「な、なんとおおお!」




空間が、虹色ににじみ、フリーズしたかと思ったら、今度は時間がゆっくりと巻き戻しされていく。核連鎖反応を逆再生してみた・・みたいなあ!




「そ、そ、そ、そんな事も…」




「えへへ、出来るのよ、まあ、これは、恭介のお陰ね、ありがと」




「へ、なんで。何で僕のおかげなの?」




「あ、ああ。あの前のダイブでね・・あ、巻き戻ったから後で言うわね」




あぶなかった、あたし、神様だから嘘は言えない。具体的に聞かれたら、初音ちゃんと音羽さんの事も話さなきゃいけない・・どうする?アタシ・・


でも、今は、恭介の為にも、この事は、なるべく伏せておかなきゃね。




「再生したら一気にいくわ」




「OK 視聴率は、今、97.6%だよ」




「再生ぃ」




一機目が、核爆発する数秒前。


既に、純菜の背中のファンネルは、恐ろしいほど光っていた。




「大袈裟なプレゼンは、おしまーい。」






ヒュイン




光の触手が全てを貫き通し消し去る。


コンマ一秒たらず、


一瞬、


瞬く間、


たったそれだけだ。




残りすべての・・


数百機は、残っていたギャラックスは、空間に光分解され消えていった。




「はい、おしまーい。さあ、帰ろぅ」




「うん、おつかれ~。今回こそ誰も死ななかったね」




「向こうの司令部じゃ、そうでもないみたいだよ」




「まあ、そこは仕方ないよ」




高次元のパワー。


それは、軽やかで、シンプルで、精妙なバイブレーションをもつと言う。




ちはやぶる・・純菜さん。


確かに、その時の、純菜さんは、少なくとも、物理の常識を遥かに超えていたし、そんな形容が相応しい・・そういう風に見えたんだ。




数日後、ナカ国では、内部で小さな革命が起り、絶対与党たる量産党は壊滅。新しい中央が誕生する。これによりナカ国は、名実ともに日本帝国に参加する事になった。




□■




西暦2041年某日




「ねえ、純菜さん。この前言ってた僕のお陰で・・て何のこと?」




「えっ。今聞く」




「うん。ずっと気になってたんだよ。けど、なんか聞きにくかった。」




「あのね、恭介。今は、その話やめよう」




「だめだ・・。ぼくも、忘れようとしたんだ。でも、駄目なんだよ」




「次のミッションでね。この星系の時空連続体の雛形へ行くの・・あなたも一緒にね。だから、そのミッションが終わってから話した方が良いと思うのよ」






「は、はつね・・って誰?」






つづく

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