第12話 正解者の世界

2221年夏。真っ盛り。



沖縄の海、水平線、焼ける砂、肌を刺す日差し。


青と蒼の間に浮かぶ白蛇のような入道雲を眺めながらビーチでカクテル。


家族づれ、カップル、こども、シニア。


目の前に広がる美しい世界に圧倒される。


ココには、純粋に、その幸せを楽しむ者以外はいなかった。




γ世界線の極細部。


時の分岐の正解者たち。


ほぼ、全ての分岐点でポジティブを選択してきた者以外ココに存在する事は無い。




僕は、この世界の特異点。


人が人から奪う世界から来た汚れ人だ。




3杯のマイタイを頼みにバーに向かう。


バーテンのイケメン兄さんは、満面の笑顔でシェイカーを振り。気さくなパフォーマンスをさりげなく添えてカクテルをそそぎ、ウインクして渡す。


「美味しくできました。はいどうぞっ」


「あ、ありがと」


男の僕でも、照れてしまう。




この世界で仕事を持つ者は、


もれなく天職で、


まわりに幸せを伝えている。




アキオである僕も、そうっだたけれどね。今は恭介の意識が僕を半分以上支配していて、マイナスの感情を持つ恭介でもある僕は、常に劣等感とか力の無さと言った痛みを感じ続けている。




この世界に唯一相応しくない人間。


それが、僕だった。




「今日も良い天気になった。良かったさあ」


「ねえちゃんたちは、まだこんのか?」


民宿のおばあちゃんがお昼ご飯を届けに来てくれた。




「はい。いっつも遅いんですよ、あはは」


その時。




バイン、バイン・・



「バイン、バイン?」



「おにいちゅあーーん。」


ばいん、ばいん。


妹の初音が、走って来た。




左右のおっぱいが揺れてるってもんじゃね~。そのカラフルなビキニから中味が飛び出しそうになりながらも、気にもせず恥ずかしげもなく僕に飛びつき笑ってみせた。



「か、かわええ・・」



「ろりこん、おにいちゃん!これでどうぉ?」



「・・・・う、うん。いい」



「えへん。身長172㎝、体重はぁ内緒でぇうえから96-61-88だよ。」



「あわわわ。ダイナマイト細巨乳」


流石にこの世界の男どもも初音のダイナマイトに皆鼻の下を伸ばしているぅ




「な、ほそきょにゅって!」



「あ、いや。凄い・・きれいだよ」



「これで、今夜お兄ちゃんのを・・ばいんばいんって」



「こ。こらああ。ばいんばいんさせながら言うんじゃない!」



はあ、こいつが来ると途端に胸の痛みが消える。


何でだろう。



「きょーすけー」


「章夫」



「かあさん。純菜・・本当に、全員が二十歳になったんだね。てか、純菜さん・・」



「なに、泳ぐ?」



「い、いや。僕も、もう少し、たくましいムキムキのボディにしてくれない?」



「あ、だめ、ダメダメ。」



「な、何でだよ。初音だけずりーじゃんよ」



「あたし、嫌いなの・・ゴリマッチョとかムキムキがっ」



「じゃあ、腹筋だけで良いから・・割って!」



「まあ、そのくらいなら・・いいよ。えい!」



「うっはああ。かっけー俺。バリバリや。純菜神や~」



「あははは。恭介、面白ろ」



でも


この幸せ過ぎるこの世界は、僕の本当の世界じゃない・・


ふとすると、心臓を摩るように出てくる。


この、思いが拭えない。




本当の僕は、2039年のあの日からずっと地下施設の思念ダイブ用のベッドで寝た切り状態なのは、紛れもない事実であり・・いつか戻らなければいけない、




嫌だ、嫌だ。


ずっとこの三人とココで暮らしていたい。




何もかも、一切合切忘れて永遠に・・ここに住んでいたい・・




・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・




「・・・・・おにいちゃん!」


「章夫!」


「恭介ぇ~」




「はt!・・・・」



「おにいちゅわぁん、なに暗い顔してボケっとしてるのよお」



「ああ、ご、ごめんよ、みんな・・」



「てか、わかってんでしょうねっ。こ・ん・や」



「は、はひ?」



「章夫、大丈夫?三人も・・」



「母さんまで・・」



真夏の太陽の魔力に、理性を吹き飛ばされた肉食系女子が三人、僕に何かこれまで以上の働きを期待する目つきが、いやらしくて、かわいくて、愛おしくて・・




この夜・・この3人とむっちゃくちゃ○○○した!


やっぱり、ここから帰りたくない・・





■■□





深夜。


悦楽のままに精魂尽き果てた僕は、露天風呂に浸かりぼーと月を眺めていた。


ここの、みんなみたいに・・


身も心も満たされて生きてみたい。



「はあ~」



それは、無理だと言わんばかりのやり切れないため息がでた。



カチャ。カラカラカラ


「恭介、一緒にいい?」



「うん・・」



「元気ないね。初音ちゃんと音羽さんにやられ過ぎた。うふふ」



「うふふって。純菜、ヤキモチとかないの?」



「だって、ここでは普通のことじゃない。」



「だけども・・純菜には、あるでしょう?」



「・・・じ、実は無いの。」



「えっ」



「理解は、できるのよ。でも、もう無いんだよ。だって神様なんだよあたし」



「お、俺と結婚するってこの前まで言ってたよね。」



「ご、ごめん。」



「・・・・・・」



「でもね、恭介とあたしは、これから一緒に旅に出るのよ。」



「は、はあ?何処に?」



「地球の雛形へ・・今から・・」



「ひながた」



「ほんとに、ごめん。今から恭介と章夫を分離します。これは、音羽さんと初音ちゃんの為よ。あなたが、居なくならないように・・」



「なに?あああ、眠い。意識が薄れて・・く」



「今から、あなたは、2039年のあの部屋で目覚める。辛いだろうけど・・我慢してね。目覚めたら、この記憶は、全く無いからね・・ごめんね・・ゆるしてね・・」



「い、嫌だ。冗談だろ!やめろおおおお」



「ごめんなさい、ごめんなさい」




★★★




「はあ、ああ」


「あれ?純菜。僕ずーと眠ってたみたいだね。」



「ええ、そうよ。今回は失敗。」



「でも、何か楽しくて幸せな夢を観ていたような・・おかしいなぁ」



「ご・・ごめん・・」



「え?なに?で、何で泣いてるの?」




恭介。


大好き・・




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