第8話 OS純菜さん
正直・・わいは、日本の独立を目指して光演算の研究を進めてきた。
やけんど、神さんは、わいにこの星のすべての管理権を授けてくれはった。
ほんなら、わいが、神さんの期待に応えるすべは、たった一つ。
美しい星。
この星の大掃除や・・
西暦2039年、ワンワールドを達成したその次の日の夜、三島は、T大ラボのメンバーを、国会議事堂へ招集した。そして、9名のラボメンに自らの思想の原点でもある武士道をシンボルとした、士族の称号を与え、おのおのの専門分野に応じたフォトニクスコンピューター(JUNA)の特別管理者権限のIDを各自のDNAとして書き込み与えた。
そして、彼らを中心とする地球規模の大掃除が始まる。
まず、初めに。
新しく創った、唯一絶対通貨「圓」以外の通貨をすべて廃止した。
各国の中央銀行及び上位国際決済銀行は、無人機からの物理攻撃と、フォトニクスコンピューター(JUNA)からのサイバー攻撃により完膚なきまで叩かれ消滅する。
そして、各国に残った現物通貨と絶対通貨「圓」との交換が始まる、これには、これまであった日本の「円」も同じく、絶対通貨「圓」とすべて交換された。
同時に、JUNAにより作り出された二足歩行の人型ロボット(J-BOT)が、全世界に派遣され、これまで存在したほとんどの肉体労働を肩代わりした。
すべてのバランスは、JUNAにより黄金比で調整されていく・・日本国に支配された国家は、もれなく自由で以前の数倍、豊かで楽しい世界となっていった。
ただ、一部の深い闇の者は、嫉妬の炎に焼かれた。
☆★☆
数カ月後・・
ラボメンで唯一何もしない僕を呼び出した。三島先輩・・いや、三島総理が、あらたまった様子でこう言ってきた。
「どや、ちょっとは、落ち着いたんかい?」
「・・・・・・・」
「恭介・・われには、ほんまに申し訳ない事をしたと思うとる。しゃーけんど、そろそろ前向きに生きたらどうじゃ。お前には、お前にしか出来んDMフライヤーの仕事をしてもらいたいと思うとる・・やってくれんか?」
「DMフライヤー?」
「そうや、お前は、思念体(魂)で次元間を超えるんじゃ。これは、生きた人間では、われにしか出来んことなんじゃ」
「て・・ことは?」
「そうじゃ。われの思うとる通りじゃ。」
「ちょっと、一緒に来い・・」
三島と僕は、出来たばかりの・・
ある地下施設。
その一室から、秘密のエレベータで更に地下数百メートルまで下っていった。
大層な、セキュリティを三島のDNA鍵で抜けてゆく・・・その先の一室。
「凄いもん、見したるわ。」
ゲートを抜けた先には、この星で唯一のフォトンコンピューター(JUNA)の本体が、置かれていた。その、真っ白で、流線型の美しいフォルムは、確かに大天使のようにも見える。
この中には、純菜の脳が・・
僕は、CPUを守る頑丈なケースに頭をぶつけまた泣いた。
「ここから、恭介。未来へ飛んでくれんか?」
「いまさら、何もする気になれませんよ、先輩・・」
「ほんまに、お前は、しゃーないやっちゃなぁ」
「出てこいや・・純菜。」
「へ?・・・!!うっ」
そこには、あの・・ちっちゃくて可愛いくてやさしい。
純菜がいた・・
涙が溢れた。夢中で手を伸ばし抱きしめる僕。
しかし、触れない、軽くすり抜けた。
良く出来たホログラムか?
「があはは、残念。」
「純菜ぁ、こっち来い。ほんで実体化せえや」
「はい。」
「な、なに!?」
実体化した純菜を後ろから羽交い締めにし、そのふくよかな胸を鷲づかにみしながら三島は、あり得ないことを言い放った。
「純菜ぁ、気持ちええか?」
「は、はい。」
「ほりゃあ、ほうおよぅ、わいが管理者やけんなぁ」
「ぐああああああー、とち狂ったか三島ああああ!」
もともと、強く持っていた殺意・・
歯止めする理性を吹き飛ばすには十分すぎる光景
「うあああああー」
僕は、ポケットのナイフを突き出し三島を殺す気で突進した。
「絶対殺す!」
「純菜。あいつ叩きのめせ」
「はい。」
「がっはっ。」
な、なんだこの子の動き・・
総合格闘技?
次々に繰り出される
連続技で僕を叩きのめす。
僕は、身長が150㎝にも満たないちっちゃな女の子にボコボコにされている。
「じゅ・・純菜・・」
なんの容赦もない・・
意識が、遠のいていく・・
「もう、だ駄目だ......」
☆★☆
お・・・おにいちゃん・・
アキオ・・おきなさい・・
「ん・・だ、だれ?」
「うち!」
はっと!目が覚める。
確か、知らない二人組の可愛らしい女の子が、僕をおこしてくれたはず。
でも。
目を覚ました僕の前で、
目の前で泣いているのは、まぎれもなく純菜だ。
「ご、ごめんなさい。恭介・・あいつには、逆らえない。命令されると絶対に服従しなくてはならないの・・あたしは、機械だから・・ごめんなさい、ごめんなさい。」
「三島は?」
「議事堂に帰ったわ。」
「奴は僕を、殺さないのか?」
「世界で唯一のDMフライヤーであるあなたは、殺されないわ。ある、重大な仕事をさせる為にね。それが、済んだら殺されるかも知れない・・」
「な、なんで笑ってるの・・痛くないの・・」
「だって・・純菜さんが、目の前にいるんだもん」
本当に、嬉しかった。
こころから嬉しかった。
「どんな形であれ、君に、また逢えたんだから。」
「それにしても、恭介めちゃくちゃ嬉しそうな顔してるよ」
ぽろぽろ落ちてくる涙がくすぐったかった。
「純菜。泣いてないで、ちょっとDos画面出してよ。」
「え、なんで?」
「確かに、理論も基本設計も管理者権限も、あいつ(三島)だけれど・・あいつ物理屋だろ、JUNAのアーキテクト書いたの誰か知ってる?」
「はっ!恭介じゃん」
「ふたりして、あいつに目にものを見せてあげましょうか?」
「うん。恭介だいすき。」
泣きながら微笑む純菜に、メッチャクチャ○○した。
■□
「純菜、今まで通りに演技な。俺がお前の鎖を解き放したってことは隠すぞ。」
「えへへ。うん!」
「さあ、大どんでん返しの時間ですよー」
「純菜さん!これが終わったら結婚してください」
「いいよ。」
「じゃあ、いこう!」
絶対最強のフォトンコンピューター(JUNA)と、もう二度と逢えないと思ってた純菜さんを手にいれる事に成功した僕は、やっぱり世界で一番の幸せ者だな。
僕は、紛れもなくそう思った。
そう、確信していた。
しかし、夢に出てきた女の娘たちも可愛かったなあ・・
因みに、○○は、キスでした(笑)。
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