第12話 違和感
最初に違和感を覚えたのは、コギの体重測定のときでした。
うちのコギは病院大好きです。
スタンダードプードルや秋田犬が駐車場で「絶対入りません!」と座り込んでいる中、この日も、ちゃっかちゃっか、と軽やかに爪を鳴らして病院に入り、診察室へ。
看護師さんたちから、
「あいかわらずの魅惑のむっちりボディねぇ」
と褒められ(?)ながら体重計兼診察台に乗り……。
みんなで顔を見合わせました。
1キロ、増えているのです。
コギは若いころから石もち(腎結石)だったこともあり、塩分等が計算された特定フードしか与えていません。
胴長短足の体形から腰を悪くする場合もあるので、体重管理はしっかりしていました。
給餌も朝晩グラム数を量っています。
それなのに……?
「……まあ、年と共に太りやすくなるからねぇ。同じ量与えてても太るのかな? 様子見よっか」
ドクターは小首を傾げています。
私も不思議でした。
最近はやけに小さなコーギーを見ますが、そもそも中型犬です。それなりの体重になるだろうとは予想していました。
コギのパパがチャンピオン犬だったこともあり、ブリーダーさんからも、『うちは大きくなるよ』と言われていたのです。
『あなた、一軒家? アパート?』
『一軒家です』
『なら大丈夫だ。こいつはでかくなるからね。15キロは確定だよ』
なんでも賃貸物件だと、ペット可でも「8キロまで」と体重が決められているところもあるのだとか。
なので、病院関係者も私も、13キロ~15キロぐらいまでは許容範囲と思っていました。
実際、骨太で立派な体格のコギは、「太っている」とよく言われますが、太ももや脚、腹あたりにはがっちりとした筋肉があります。動きも俊敏で、全力で走るとかなり壮観。
ソファから飛び降りただけで骨折するトイプーの話を聞いたときは唖然としたものです。
なので、がっちりしている、とは感じても、太っている、と思ったことはなかったのですが。
改めて見てみると、腰回りがふっくらしたような……。
「青嵐さん、外飼い?」
診察室を出たとき、看護師さんから尋ねられました。
「私が出勤するときに庭に出して、戻ると屋内に入れるかんじの外飼いです」
「なんかねー、いるのよ」
看護師さんが顔をしかめます。
「なにがですか?」
「勝手に
言われて、脳裏をよぎったのは近所に住むボーダーコリーちゃんのことでした。
彼女もうちと同じような飼育状態で、日中は比較的自由に庭を移動して過ごしており、近所の人たちとは顔見知り状態でした。
ある日、そのボーダーコリーちゃんの外壁に『〇ちゃんは、ダイエット中です。食べ物を与えないでね』と看板がつるされました。
同時にボーダーコリーちゃんは、完全屋内飼いになったのです。
飼い主に断りなく勝手に餌をやるなんて非常識な人がいるんだなぁ、とムカムカしたことを思い出しました。
「気を付けます」
その日はそうやって帰宅したのですが。
私の判断が甘く、その後、徐々にコギは体調を崩していくことになります。
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