窓の影鳥

 この冬の時期、朝に成ると低くなった太陽が透明な窓の中に木の枝の影を薄く落とす、その影は外の景色と部屋の中を反射する窓の中に重なるようにあった。


 チチッ


「また来たんか?」


 影の中に小さな鳥が写る、私は影に写るその鳥が好きだった、首を傾げたり、ピョンピョコと枝を跳びはね歩いたりする、私は椅子に腰掛け窓を見つめる。


「あまり窓ふきすると影、写らんよう成るんかな?」


 私はその鳥を直接見た事は無い、枝を見るとそこに鳥はおらず床の影にも跡を遺さない、窓の中だけに居る影鳥かげどり


 チチッ!


「おいおい……」


 影鳥は窓に写り込んだ私の本棚から、そこを間借りしていた小さな砂時計を落とした。


 チチチ


 影鳥が時間は無限で無いと伝えている。



「解っているさ、後悔無いよう生きなければな……」



 影鳥は枝を揺らし「バサリ」と飛んでいった。

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