魔女の診療所
その真新しいプレハブの診療所はずいぶんと森の奥にあった、怪異、妖怪共が来やすいようにだか、そこにすむ魔女も人間との距離感は大切にしているようだった。
「おい、カボチャ男、その服正気か?」
頭がカボチャのカボチャ男はハロウィンに着たコスプレが気に入ったらしく今もその僧服を愛用していた。
「なに?前魔女にもらったローブはヒラヒラしてて落ち着かないって?」
カボチャ男はこの魔女の診療所にあって、あろうことか牧師の服を着ているのだ。
「妖怪共が死んだ時に都合が良いのか?」
カボチャ男は全力で首を振る。
「解った解った、あんまり重い頭を振るな、取れるぞ」
カボチャ男は静にうなづく。
「で繁盛してんのか?」
僕はガラガラの待合室で魔女を探す。
「おお、来たか人間久しいな」
診察室の扉がら開き、赤い髪の若く見える女性が入ってくる。
「人間って、あんたも人間だろう」
僕は旧友に皮肉っぽい笑顔をみせる。
アッハッハ
「私の事をまだ人間と言うのはお前さんくらいさ」
背の高い魔女は僕を軽く見下ろし明るく言ってのける。
「……暇そうだな」
僕は魔女の様子を見て余裕があると判断、今日は居座ると決める。
「まあ手間のかかる患者が一羽いるくらいで慌ただしくは無いな」
「手間のかかる患者?」
僕は厄介事の匂いを感じとる、今日は早めに帰ろうかな……。
「まあ来てくれ」
僕は待合室から廊下、診察室を通り抜けその奥の入院病室へと連れられて行った。
「……ミイラ男か?」
病室のベットには顔じゅうを包帯でくるまれた男?らしいヒトガタの者が横たわっていた。
「いいや、烏天狗だ」
「どうしたんだ?」
烏天狗は包帯の隙間から片眼で僕の方をじっと見つめる。
「森でレースをしててぶつかったらしい」
「レース?木にか?」
「ああ」
魔女は馬鹿馬鹿しいだろっと僕の方を見た。
「お前さんも仲間同士で遊ぶときは少し位安全に気を使って飛べよ」
そう言う僕を見るなり烏天狗の片眼がいきなり厳しくなる。
「どうしたんだコイツ?」
魔女はやれやれとばかり首を振る。
「レースの相手はドローンだ、何だっけ、そのう……レースドローン」
「まんまだな魔女」
どうやら仲間の烏天狗が買ったレース用ドローンと勝負して負けたらしい、
「……で、僕の仕事は?」
僕はソッポを向いた烏天狗の顔をまじまじ見つめる。
「顔がのっぺりしてるだろう?コイツくちばしを折っちまったのさ」
「なるほど……」
「でだ、頭の骨は何とかくっつけたんだが、くちばしは体の外だから自然には治らん」
「なるほどなるほど……」
魔女の依頼は新しいくちばしの制作だった。
「知り合いに歯科医が居るので相談してみるよ……アイツ歯科技工士だっけ?」
僕はそれがダメなら義足とか作る義体師にでも持ってくかなっと思った。
「ああ、頼む」
魔女はそう言うと烏天狗にウインクをした、人間も悪くないだろって事だ。
僕は今、妖怪相手の商売をしている、報酬は金銀財宝、大判小判の時もあればドングリいっぱいの時もある、僕は報酬によらず依頼を受ける事にしている、報酬の内容を気にしていては妖怪共の仕事は出来ないのだ。
「烏天狗は社会性があるから報酬は出そうだな」
僕がそう言い烏天狗を見ると烏天狗は人指し指と親指を小さく摘まむようにして、少しと答えた。
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