04 ENDmarker2.

 走った。


 彼女。


 校門で、立ち尽くしていた。


 傘を差している。


柄位つかいくん」


 雨の音に紛れて、彼女の、か細い声。


碑奈ひな。おれは」


 おれは。


 なんだ。


 何を言えばいい。


 友達以上恋人未満の関係は、ここで終わる。


 彼女は唄うために、雄飛する。


 自分は、このまま。くすぶって終わる。


「おれは」


 それ以上が、出てこない。


 雨の音。


 消えた。


 視界が、少しだけ、暗くなる。


 傘。


 差し出されている。


「濡れちゃう」


 彼女。


 傘の中。


 近い。これだけ、近付いたことが、いままで、あった、だろうか。


 彼女の息づかいが。涙が。見える。すぐそばに。


「おれは」


「うん」


「きみが好きだった」


「うん」


「でも。あなたの、声を。唄を、こわしてしまうのが。こわかった」


 彼女。


 涙を、拭うしぐさ。


「わたしも」


 次の言葉を、待った。


「わたしも、好きでした。いつも助けてくれて。勉強を教えてくれて。画を」


 また、涙を、拭う。


「画を、見せてくれて。あなたの画は、とても素敵でした。でも」


 彼女。わらいかける。


「わたしが、わたしだけが、あなたの画を、見るのは。もったいない、です。あなたは、すごいひとで」


 違う。


「わたしとは、ちがったから。ありがとう。わたしを、好きになってくれて。私のそばに、いてくれて」


 違う。


「さよなら」


 彼女。一瞬だけ、抱きついて。


 傘を自分の手に滑り込ませて。


 自分の視界から、消えていった。


 追うことが、できない。


 走り去る彼女。


 傘と自分だけを、残して。


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