血吸い姫と仙境者
城内からは外を見ると、赤い赤い月が妖しく笑い、彼らの
ここは人ならざる者が集う、異形の城。
オーケストラの演者たちは黙々と
集まる客人たちは実に多種多様。
人に近しい者から、遠く離れた別の何かまで。
例をあげるならば、そう――海色のウサギに、球体関節の人形、真紅の猫など。
真っ当な人類種は存在しない。
その中で一人、腰から生えた黒い翼をパタパタと動かし、忙しなく食事を続けている吸血鬼の少女がいた。
黒をメインに紅色で飾られたドレスを着る少女は、落ち着きのある色合いの衣装とは裏腹に、結われた白髪と赤と青を彩る
月に代わり紅き音を奏でる吸血鬼――
「――……はぐっ……もぐもぐもぐ……」
赤く
生魚に果実、サラダどころか野菜のヤの字すら混在を許さない彼女のテーブルは、嫌いな食べ物に対し親の
止まる事の無い
意気揚々と新たな皿を取り、列へと並ぶ
「本当によく食べるね、
「おお、シノブ様なのじゃ。まだまだ
アレもコレもと皿へ移す
整った顔立ちに艶のある黒の長髪と
彼の皿は
「アッチに
「本当かえ? んー……行くのじゃー」
シノブは彼女の後を付かず離れず追い、途中
ようやく目的地へたどり着いた
新たに
「さてと。
「あー、どうするかの。
実際に輪舞に見惚れていたのか、それとも別の何かに気を取られたのか。
言葉に詰まった
その視線は単純な好奇心に満ちているが、踊る相手を探してるのかどうかは定かではない。
「
「いってらっしゃいなのじゃー」
モクモクと食事をしている
軽く会話を済ませる程度の時もあるし、一緒にどうですかと踊りへと誘われたりもする。
そうして知人たちとの楽しい一時を過ごしたところで、シノブはふらふらと会場を
「
「シノブ様? 物は試しと踊ってみようと思ったのじゃがな。相手がいないのじゃ。その……ほれ! あれじゃ」
唐突に後ろからシノブに声をかけられ、結った髪を猫の尻尾の如く跳ね上げる
「あーはいはい。声をかけられなかったのね。――それじゃあ、はい。
やや硬めの言動で心中を察したシノブは、ため息をつきながらも
一瞬呆然とした表情で、向けられた手を見つめる
片膝を付き、左腕は背中側へ。
「それはズルいのじゃよ、シノブ様」
「そう? こういう所ならピッタリでしょう。……ところで
「大丈夫なのじゃ。なにせ
シノブのエスコートで会場の中央にまで連れられて行く
口では天才と豪語する吸血鬼が、この後の輪舞でどうなったかは、また別の話。
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