第56話 非凡

しばらくの沈黙の後、戌走はようやく口を開いた。


「………伏野が私のことをどう思っているかはわかんないけど、私は伏野を尊敬しているんだー」


「尊敬?」


「うん。尊敬」


戌走は根無の問いに笑顔で答えた。

嘘偽りのないような表情で。

そして、戌走は話を続けた。


「伏野はね。努力家なんだよ。小学生の時、私とは違う学校だったけど、毎日私の家の近くの公園でサッカーの練習をしていたんだー」


「毎日?あの伏野くんが?」


「うん。本当に毎日。今、伏野はサッカーをやらなくなっちゃったけど、伏野は本当にすごい努力家なんだ。誰にも真似ができないくらいね。だから私は伏野を尊敬しているんだー!」


戌走はそう言った。

伏野はすごい才能を持っているんだ、と。

私の友達は本当にすごい人なんだ、と。

彼女は根無にそう伝えた。

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