第54話 心情

「伏野!伏野!」


戌走陽菜の明るい声で伏野昇一を呼ぶ声が響き渡る。

これは1年D組の当たり前なことである。

そして、その二人と同じクラスである根無陽菜はその二人の様子を遠目から見つめていた。


(あの二人って本当に仲良いよなー)


耳にイヤホンをつけているため、はっきりとは話している内容を聞き取れていないが、二人の表情を見れば一目瞭然であった。


(私、中学の時まで女友達しかいなくて、全然男子と関わってこなかったなー)


根無はそんなことを思いながら、彼女の中学時代を思い出していた。


(でも、最近だと伏野とかと話す機会があって少し嬉しいのかもしれない。伏野、と)


と、根無は心の中で思うと、イヤホンをつけたまま机に突っ伏した。

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