第49話 帰路
一方、伏野と一緒に帰れなかった戌走は荒井とは早めに帰り道が分かれてしまうので、一人で帰路についていた。
(伏野はどこかに行っちゃうし、天音ちゃんとは早めに分かれなくちゃだし。今日の帰り道はあんまり楽しくなかったなー)
など、と思いながら、歩いていると、少し前を歩く見知ったジャージ姿の人影を戌走は見つけた。
そこまで戌走は走って追いつくと、その人物前に回り込んだ。
「夢叶ちゃん!夢叶ちゃんだよね!?」
「ん?あ………陽菜?陽菜じゃん」
夢叶と呼ばれた少女はそう言った。
戌走よりも頭一つ分くらい背の高く、黒髪をポニーテールで後ろにまとめていた。
「小学生以来だね!」
「うん、久しぶり」
夢叶はあまり高くない安定した声でそう言った。
その対として戌走はかなり高い不安定な声で話を続ける。
「噂だと中学の時に遠くに引っ越したって聞いたんだけど………」
「うん。一回引っ越したんだけど、お兄ちゃんがここでアパートを借りて住みはじめたからそこに今は住んでいるんだ」
「お兄さんと一緒に暮らしてるんだ。夢叶ちゃんのお兄さんいい人だもんね!」
「いや、全然良い人なんかじゃないよ。なんの仕事やってるのかわからないけど、どこかに転々としてるからアパートの契約とか全く把握してなくて。良い人じゃなくて駄目な人だよ」
と、夢叶はため息を吐きながら言った。
そんなことを話していると、夢叶は小学生時代のことを思い出した。
「そういえば、陽菜が小学生の時にずっと僕に話してた違う小学校の男子と同じ中学だったんだよね?どうだった?仲良くなれたの?」
夢叶は戌走に問いかけると、戌走は笑顔を浮かべた。
「うん!なれたよ!」
「そう。それは良かったね」
と、夢叶は優しい笑みを浮かべながら言った。
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