第44話 茫然

フットサル同好会である伏野達五人は何故か、ボーリング場に来ていた。


「いや、本当になんでだ!?」


伏野は思わずそう言ってしまった。

この同好会の発足人である次石が提案したことであったが、戌走と根無は何故か了承したことにより、多数決で行くこととなったのだ。


「なんでって楽しいからに決まっているじゃん!」


と、戌走はそう言うと、転がした球が見事に全てのピンを倒し、ストライクを叩き出した。


「お前って本当運動神経いいよな」


「へへ。ありがとー」


伏野がそういうと、戌走はへにゃっと笑いながら答えた。

そして、次の投球の順番は伏野であった。


「よし、次は俺か!」


伏野はそう言うと、腕まくりをして立ち上がった。

数秒前にはボーリングをしていることに疑問に思っていたが、もうすっかり飲まれてしまっている。

伏野がボーリングの球を持つと、後ろから次石達の「伏野くん、頑張れー」という声援が聞こえてきた。


「俺もストライクを取ってやるぜ!!」


と、伏野は思いっきり球を転がそうとしたが、次の瞬間、隣のレーンの知らない人が足を滑らせ、その人の指から離れた球が伏野達のレーンに勢いよく転がっていった。

それを茫然と伏野が眺めていると、その転がっていった球が全てのピンを倒してしまった。


『ストライク!!』


という、ボーリング場にある画面だけが無情に鳴り響いていた。

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