第36話 眠気

「はぁ……」


伏野はそう言いながら、騒いでしっかりと並んではいないクラスの列に戻ろうとしていると、肩にどんと何かがぶつかった。


(ん?)


そのぶつかられた人物を見ると、根無だった。

伏野はぶつかった根無の両肩を持ち、体制を元に戻すと、その根無に問いかけた。


「どうした、お前」


「いや、ちょっとバスで疲れたから」


根無は眉間を押さえながら、言った。

そんな彼女の様子を見て、なんとなく原因を察することができた。


「あー、100%戌走のせいだろうな。あいつ一度話し始めると止まらないからな」


「いや、それのせいじゃないと言ったら嘘になるけど、それが原因じゃない」


「じゃあ、何が原因なんだ?」


「朝からずっと眠気がすごくて」


と、根無は目元を擦りながら言った。

その時ふと伏野は朝のことを思い出した。

確かに今日の朝、戌走と一緒に根無と会った時、何回もあくびをしていた。


そんな根無を見ていたら、伏野はある思考に至った。


「お前、もしかして今日の登山が楽しみで寝られなかったのか?」


伏野はそう言うと、根無は相当驚いた顔を浮かべた。


「え」


「だって、言うだろ。楽しみだと前日寝れないってやつ」


「まぁ、楽しみじゃなかったと言ったら、嘘になるかも」


「だよな。俺も戌走がはしゃぎすぎてて若干引いてたんだが、俺も楽しみじゃないわけじゃない」


と、伏野がそう言うと、ふと後ろの先生達が並んでいるところで担任の坂本がこちらを睨んでいたことに目がいってしまった。

おそらくしっかりと並んでいないことに、怒っているのだろう。

そのため、伏野は根無の元を去りながら。


「じゃあ、あとでな」


と言った。

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