第33話 山彦

「着いたー!!山!!」


戌走は乗っていたバスを降りた瞬間に元気よく叫んだ。

山びこを狙っていたようだったが、出来なかったようだ。


「伏野ー!!山びこできると持ったのにできなかった!!」


「戌走、一つ聞いていいか?」


「何、どうしたの?」


「お前って高校生なんだよな?」


伏野の問いかけに戌走は頭にハテナマークを浮かべた。


「伏野と同じ高校一年生だけど」


「やっぱりそうだよな。なら、周りを見てみろ」


伏野はそう言い、両手を広げた。

それに合わせて戌走が周りを見渡すと、あることに気がついた。


「クラスの皆がこっち見てるね」


「ああ、そうだ。クラスのみんなだけじゃない、たまたま近くにいた観光客もお前を見ている」


「そうだね。私たち、目立ってるね」


「ああ、ものすごく悪い意味でな」


伏野は嫌味を呟いたが、戌走は気にしていない様子だったため、深くため息をついた。

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