第32話 正解

ようやく出発したバスの中

担任から男女別で乗るようにとは言われていたが、班のメンバーでなるべく近くなるようにとも言われていたため、伏野と次石で座り、その後ろに戌走と根無が座っていた。


「伏野くん、俺とゲームしよーよ」


「何するんだ?バス酔いしやすいから頭を使いすぎるゲームは無理だぞ」


「そこまで頭は使わないから大丈夫。ルールは簡単、それぞれ心の中で考えた人物を交互に予想しあって、その人物を当てるゲームさ」


「まぁ、そのくらいならバス酔いとかもすることもないからいいが、なかなか難しくないか?」


「大丈夫。意外と当たるものだよ。それに先攻後攻どちらも終わった時、性別、性格、見た目などから何が最も近かったか、教え合うんだ。それなら何回かやればわかるようになるだろう?」


と、次石は伏野にメモ帳を一枚渡し、そこに証拠として書き記しておくように促した。

そして、これは互いに見せないようにするのだ。

伏野と次石はほぼ同時に人物を書き終わった。


「伏野くん。それじゃあ、ゲームスタートだよ。先攻は伏野くんから」


次石にそう言われ、伏野は真剣に考え始めた。

初回で当てられるわけがないと思っていた伏野は無難なところ攻めるため、歴史上の人物を言うことにした。


「織田信長」


「不正解!でも、まさか歴史上の人物を言ってくるとは思わなかったよ」


「正直、クラスの奴の名前でも良かったんだが、あまりこのクラスの奴の名前、全員は覚えてないからな」


「やっぱりそう言うことかー。じゃあ、次は俺の番だね。『戌走陽菜』さん」


「………せ、正解。なんで一発目からわかったんだ!?」


「伏野くんって言ったら、戌走さんだからね」


と、次石は言った後、鼻歌を歌い始めて上機嫌の様子だったが、伏野はなんかこいつ恐ろし、と思いながら次石の顔をしばらくの間見ていた。

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