第30話 元気

朝の通学路

伏野が歩くこの道はいつもより暗かった。

だが、いつものように戌走が後ろから話しかけられた。


「伏野、おはよー!」


「お前、本当元気だな………」


伏野は後ろを振り返り、あくびをしながら言った。

そして、伏野の隣まで戌走はやってきた。


「それはそうだよ!だって、今日は遠足の日なんだから!元気出してかないと!」


「とか言ってるけど、バスの中で寝ちまうんじゃないか?」


「寝るわけないじゃん!私は常に元気でいれるもん!」


戌走は曇りのない笑顔でそう言った。

だが、伏野は今日、戌走と会ってから一つだけとても気になっていることがあった。

問うのを躊躇ったが、ついに我慢の限界が来てしまった。


「戌走、お前なんでスーツケース持ってきたの?」


「え!?なんでって遠足だからだよ」


「いや、今回の遠足は一泊もしないぜ」


「えぇ………?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る