第29話 四字
放課後の教室
ほとんどの生徒がいなくなったその場所で戌走の声が響き渡った。
「ごめん!伏野!今日一日中考えてだんだけど、全く意気込み思いつかなかった!」
「まぁ、しょうがないだろ。俺も考えてたけど、無難なことしか思いつかなかったんだからな」
「どんなこと?」
「『高校生になって初めての行事ですが、共に頑張りましょー』って感じだ」
「本当に無難だね。無難すぎて怖いくらい」
「怖がるほどかよ」
伏野は戌走の言動にやや呆れていると、もう一人協力をお願いした生徒、次石が伏野の側に近寄ってきた。
「伏野くん、意気込み考えてきたよ」
次石はそう言いながら、その意気込みが描かれているであろう紙を渡してきた。
「サンキュー」
伏野はそれを受け取り、紙に書かれている文字を読んだ。
そこに書かれていたのは。
『緊褌一番』
「読めない!!」
伏野の隣でその紙を見た戌走は叫んでしまった。
そんな彼女を横目に次石は茫然とする伏野に説明を始めた。
「この四字熟語は気持ちを引き締めて取り組むという意味らしいんだ。この一言をパッと言うだけでいいんじゃないかな。ちなみに読み方はきんこんいちばんって読むらしいよ」
「本当にありがたいんだが、一つだけ変なこと言っていいか?」
「いいけど、なんだい?」
「お前が四字熟語を書いてくるとは思わなかった」
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