第9話 選抜

職員室前。


(この声は戌走と荒井か?)


まだ中に入っていなかった伏野の方まで二人の声は響いていた。

何やってんだか、と伏野は思いながら職員室の中へ入った。


「失礼します。坂本先生に呼ばれてきたんですけど……」


と、そこまで伏野が言うと、立ち上がった坂本が自分の職員室での席へ来るよう手招きした。

仕方がなく伏野は坂本のところまで歩いていった。


「悪いな、昼休み中に呼び出しちまって。お前に頼みたいことがあるんだ」


「頼みたいこと、ですか?」


「ああ。一週間後、学校の行事でちょっとした山登りがあるだろ。その前に各クラス、一年全員の前で意気込みを言ってもらうんだ。その役をお前に頼みたいんだが」


「(いや、意気込みって必要あるか?)でも、そういうのって学級委員がやるんじゃないんですか?俺じゃなくても良くないですか?」


「お前の言う通り、これは学級委員がやるんだが、さっき病院から連絡があって事故で左足骨折してこの行事に出られなくなったらしい。この学校は各クラスに学級委員は一人だからな。あと、お前を選んだ理由はなんとなく自己紹介で目立っていたからだ」


(いや、なんだその理由。しかも目立ってたのは俺じゃなくて戌走の自己紹介で、あくまで俺はあいつに名前を使われただけだってのに)


「まぁ、よろしく頼むぞ」


「はぁ……」


伏野は曖昧な返事をし、結局伏野がやることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る