第8話 転倒
昼食後
戌走たちは教室に戻るため、三人で廊下を歩いていた。しかし、伏野は担任の坂本に校内放送で呼び出され、戌走と荒井の二人きりとなった。
「そっかー。天音ちゃんはC組なんだね」
「う、うん。あまり友達とかも………あまり……できなくて」
荒井は黒い前髪で顔を隠すくらい俯いながら言った。
やはり何か思うところがあるのか、あまり目を見て話さない彼女に戌走は下から荒井の顔を覗き込むようにして。
「やっぱり、さっきのトマトジュースのこと気にしてたりするの?」
「え、い、いや……それは………」
荒井は咄嗟に目を逸らした。
そんな様子の彼女に戌走は優しい笑顔を浮かべながら荒井の手を掴み。
「せっかく天音ちゃんと友達になれたから、仲良くなりたいんだ。だから、本当にさっきのことは気にしなくて良いよ」
「わ、わかった」
荒井はそう言うと、ちらりと戌走の方に目線を向けた。
しかし、次の瞬間。
荒井の体が宙を舞っていた。
何故なら、廊下には誰かがこぼしてしまった水が散乱してあり、荒井はその水によってコケてしまったのだ。
そして、荒井の上履きの先が偶然にも戌走の頭に激突した。
「「あぎゃああああああ!!」」
宙を舞いそのまま背中を打った荒井と頭を上履きで蹴られてしまった戌走の声が校舎中に響いた。
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