第7話 謝罪

「美味しいね!伏野!」


「ああ、確かに美味いな」


伏野と体操着に着替え終わった戌走は新入生限定のメニューを食べていた。

周りでは昼食を取り終わり、ほとんどの生徒は食堂から退出し始めていた。

伏野は箸を動かしながら言った。


「しかし、まさかこの限定メニューってのが、ただの回鍋肉だったとは」


「確かにびっくりだよね」


「もっとケーキとか出ると思ってたぜ」


そんな他愛もない話をしている二人の元に一人の女子生徒が近づいてきた。

その女子生徒は戌走と同じように体操着に着ていた。

しかし、その女子生徒は一言も話そうともしないので、伏野が切り出した。


「何か用か?」


「よ、用ならある。その、あのそっちの女の方に」


その女子生徒は戌走のほうを指をさし言った。

そして、戌走は心底驚いた表情を浮かべ。


「私?」


「ほ、ほら。さっきのトマトジュースの」


「あー、それなら気にしてないよ。体操着に着替えてきたし」


「そ、それでも。私が気にするというか、なんというか」


女子生徒はキョロキョロと挙動不審に言った。

そんな彼女の様子を見ていた伏野はあえて遮るように。


「戌走は本当に気にしてないと思うぞ。こうやって誠意を見せてくれただけでこいつは嬉しいんだろうし」


「い、いやそれでも……」


伏野の言葉にさらに動揺した女子生徒は俯き加減で言った。

自分ではダメだ、と思った伏野はちらりと戌走の方を向き、戌走に目で合図を送った。

それに応答するように戌走がうなづくと。


「なら、今度一緒に食堂で昼ご飯を食べよう!」


「え!?」


「私はそうしてもらえるだけで良いよ。本当にあまり気にしてないから」


「う、うん。わかった。で、でも、良かったら今日から一緒に昼ご飯食べてもいい?わ、私、本当は今日、一人で食堂に来てたから」


「もちろんいいよ!伏野も良いよね?」


次は戌走が伏野の方を向いて言った。

伏野は黙ってうなづいた。

そしてもう一度、戌走はその女子生徒の方を向き。


「やった!それじゃあ……えーっと、名前聞いてなかったね」


「あ、荒井天音……」


「私は戌走陽菜!あまねちゃん、よろしくね!」


「うん」


こうして伏野と戌走に荒井天音という友達ができた。

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