第6話 付着

戌走が食堂の受け取り場所に行ってから十数分後。

伏野は戌走の言われた通りに席取りをしていた。

なるべく受け取り場所の近くの場所を。


(戌走は天然混じっているから、絶対一つずつ持ってくるという選択肢はないだろ。それに新入生限定のメニューがどんなのかは知らんが、値段が高いから絶対重いだろ)


そのため、伏野は受け取り場所のところで待機をしていたのだ。危なそうだったら、取った席を手放してでも助けにいけるように。


「伏野〜!!」


よそ見をしている間にそんな戌走の声が聞こえたため、伏野はその方向を向くと、もちろん戌走がいた。

赤に制服を染められた姿で。


「な、何があった?」


「かなりの行列を並んでたんだけど、私の後ろにいた女の子がイラついて持ってたトマトジュースを地面に叩きつけて全身トマトになった」


「全身トマトはよくわからんが、わかった」


伏野は戌走の後ろの状況をチラリと見てみると、まるで爆破したかのようにトマトジュースが飛散しており、戌走以外の生徒もトマトジュースが制服に付着していた。

トマトジュースを叩きつけた女子生徒も当然のようにトマトジュースが付着しているのだが。


「とりあえず、お前はいったん教室に戻って体操着とかに着替えて来い。俺が代わりに並んどくから」


「わかった……」


と、戌走は言い、食券を伏野に渡して食堂を後にした。

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