第5話 食堂

昼休み


伏野昇一が所属する一年D組に無邪気な声が響き渡った。


「伏野!伏野!」


「どうした?」


「食堂へ行こう!」


*********


食堂の外にある券売機

の前に並ぶ長蛇の列

そして、伏野と戌走はその最後尾に並んだ。


「本当に食堂って混んでるよな」


「でもでも、それぐらい食堂のご飯に価値があるってことだよっ!」


少しだけ否定的な意見を述べた伏野に対して、戌走は小さくガッツポーズをして言った。


「というかな、俺、いきなりお前に誘われたから本当は弁当あるんだぞ。それなのになんで券売機に俺も並ばされてんだよ」


「だって、今日は新入生限定のメニューがあるって友達から聞いたんだもん!それを伏野にだって食べて欲しかったんだよ!」


「わ、わかった。そこまで言うならしょーがねー。弁当は放課後にでも食べるか」


「え?本当に!!やったー!!」


戌走は大手を振って喜んだ。

そして、伏野と戌走にようやく券売機の使う順番が回ってきた。


(げっ!?八百円もするのかよ。高すぎるだろ)


などと伏野が券売機にお金を入れるのを躊躇っていると、戌走がいつの間にか券売機に千六百円を入れ、新入生限定のメニューの食券のボタンを二回押していた。


「お、おい。なんで二枚も買ってんだ?」


「そんなの決まっているじゃん。一枚は私の分、もう一枚は伏野の分だよ」


と、言いながら戌走は食券を券売機から取り、伏野に一枚、その食券を渡してきた。

しかし、伏野はそれを受け取ろうとはしなかった。


「流石にこれは申し訳ねぇよ」


「いいって。今日は私が無理やり連れてきたんだし、伏野はついてきてくれたんだから。その分のお礼だよ。受け取ってくれたら嬉しいな」


「なら、せめて半額は払わせてくれ。俺はお前に養われたと思うと少し尺だから」


「わかったよ。半額ね。その代わり、伏野は先に先取りしといて!私が受け取ってくるからー!」


と、戌走は言って、食堂の受け取り場所に走り去ってしまった。

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