第26話 婚約破棄に彩りを
「こん、の・・・!! 先程から黙って見ていれば・・・!!」
我慢ならなくなったのか、氷の魔王様ことクラウス・リーが、カッカッカッ!と勢いよくフロアを鳴らしながらルビーと脳筋ニックに近付いていく。
「筋肉馬鹿はこれでも着ていろッ・・・!!」
「誰が…!!っ…、」
『馬鹿だ…!』とでも言おうとしたのか、言い切る前に気付いたらしい。
こんなすっぽんぽんじゃ馬鹿だな。って事に。
そしてクラウスから渡された上着を、筋肉ニックは大人しく羽織るのだった。
「これ程の悪事を黙っては見ていられん・・・!! 私の氷で閉じ込めてくれる・・・!!」
「あら、あら。 大層なことですわね」
驚いたことにフロアの気温がみるみる間に下がっていくのを肌で感じた。
ルビーはそれでも動じず、いつものお決まり腕組みポーズ。
あたしらはフツーに「さっむ」って感じだけど。
「永遠に氷ついてしまえ・・・!!!」
クラウスが片手を翳すと、なんかヒョォオオオォオ───!!って音するけど、すっっごい「さっむ」って感じ。
まじ、「さっむ」しか出てこない。
え。
ぶっちゃけ、それだけ?って感じ。
ルビーは「おほほほほ…!!」とまた高笑い。
「あらぁ? その程度で私の炎に対抗できると?」
「ぐ・・・! まだだ・・・!!この程度で侮ってもらっては困る・・・!!」
さらにさらに、ヒョォオオオォオ───!!って音するけど、また「さっむ~!」って感じ。
まぁ確かに氷は何となく張ってるような気もするけど、ルビーの周りから直ぐ様解けていく。
「もう一度言いますわ。 その程度で?」
「クッソ・・・!!舐めた口を・・・!!!」とか言ってるけど、いや、もう良くね?
流石にこれ以上ダサくね?
つーか魔力の差歴然じゃね?
「ルビー様って本当に凄いのねぇ」
「なー」
と、あたしとアキナは感心、感心。
「マリンさん、申し訳無いのですけれど御願いをしても宜しいかしら?」
「はい、なんでしょうか?」
「何処かのお馬鹿さんが無駄にフロアに氷を張ったせいで水浸しですの・・・。」
「本当ですわね…全く。 私が集めましょう!」
マリンがくるくると人指し指を回すと、みるみる間に溶けた水が集まっていく。
ぷわんと一個の水の塊が出来た。
まるで宇宙飛行士が水を溢したみたい。
「そうですわ!ルビー様! 折角の舞踏会なんですもの、もっと素敵に飾り付け致しましょう!」
「まぁ!いい考えですわ!」
マリンは一塊に集めた水を幾つにも分裂させて、ころころと空中に水の塊を浮かせた。
そしてその水の中に、ルビーの炎が優しく灯される。
水の表面が揺れる度、炎もきらきらと輝いて揺れて、フロア全体が不思議な空間となった…。
まるで私達まで浮遊してるみたいだった。
「えー・・・、やばーーい・・・。 ちょー夢みたいなんですけど・・・」
「本当ねぇ・・・、とってもロマンチックね…!」
「嫌ですわ、折角のお料理が冷めてしまいました…。 ルビー様!温め直しましょう!」
「あら、ペリドットさん。 それもそうね!」
「ついでにハーブも沢山入れちゃいましょう!」
「まぁ! ペリドットさんのハーブ料理なんて、滅多に頂けないから嬉しいわ!」
ふわ、と辺りに漂う良い薫り・・・
周りの貴族達も途端に『ぐう』と腹がなる。
勿論、私達も。
「貴様・・・!! まだ話は終わっていないのだぞ・・・!!!」
ジェード殿下が大層にも人指し指をぴーんと天井に向けると、バチン─!と稲妻が出て、フロアの電気がふっ、と消えた。
まぁ、もしかしたらフロア以外も消えてるかもしれないけど、そこはどーでもいーか。
「電気がなければ夜は暗闇に覆われたままだ・・・!! 私の能力を侮ると痛い目見るぞ・・・!!」
とか叫んでるけど、いやーこの状況でねー。
そんな事言われてもねー。
なんつーかねー。
「まぁ!殿下。 ムードな演出、感謝いたしますわ。」
「なに…!?」
フロアはルビーとマリンの魔法で浮かんでいる無数のランプ。
暗いと更に幻想的だ。
「では私は花でも…、」
ペリドットが手のひらをフロアに優しく差し出すと、至るところに美しい花々が咲き誇る。
それで更に、花びらを空中に舞わせるから、なんかもうやばい。まじやばい。
天国並みにやばい。
「ほぅ・・・」と皆はその美しさに息を飲む。
「美優もどうですか?」
「そうですわ!一緒に飾り付けましょう!」
「え、あたし…!?」
「ま!美優もこんな素敵なこと出来るのぉ…!?」
「えぇ、美優。私の鮮やかな婚約破棄を彩ってくださいな。」
つってもどーすれば・・・。
そんな皆みたいに素敵みに溢れる魔法じゃないし~・・・
無茶振りとか~・・・!
と、無い脳ミソを捻ってたけど、「あ、そっか!」と気が付いた。
私もフツーに自分の魔法出せば良いんだ!
「んぐぐ~~~・・・・えぇえい・・・!」
ぱっふーーん。とラメが空中に舞った。
ペリドットが舞わせた花びらと一緒に舞い踊って、とってもキレイだ。
我ながらやるな。
「もう、美優ったら。 もっとスマートに魔法を出せないものかしら」
「えー、空中に舞わすとか初だしー、そりゃちょっと力むっしょ!」
「でも綺麗ですわ」
「えぇ、本当に。 珍しい魔法ですわね…」
「いやん…! 美優ってばこんな素敵な魔法を持ってるだなんて…!」
「ふぅ・・・、全く・・・。 落ち着いたか…?」
心配そうにルビーや、周りの貴族達の様子を伺うクロウ。
第一王子として、皆が安全に舞踏会を過ごせるよう気も使うだろう…。
そして、ジェード殿下とルビーの間に割って入れないのは、元々ルビーとクロウが婚約するはずだったから。
そりゃお兄ちゃんでも、例え、第一王子でも、付き合うハズだった男が入ってきたら、めっちゃ、ややこしい!
3角関係出来上がっちゃうじゃん!
クロウはクロウで、「まぁ、自分が出るほど惨事にならず良かった・・・」とかフラグ立てるからー。
ほらー。
なんか最後のひとり出てきちゃったじゃーん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます