第27話 いや、皆こわいんですけどー…
そう、その最後の一人・・・。
リック・ハート。
「先程から…! 何なんですか…!? 美香さんを放ったらかしで…! 何をやっているんですか…!!」
その言葉にハッとする、ジェード殿下とその他取り巻き男子。
いや、当の本人ミカちゃんは飽きてますけどって感じだけど、そう言われたミカちゃんも、『そうですよぉ』と言いたげな顔を直ぐ様作る。
クソビッチ演技力ぱなー。
リックはと言うと、やはり他の皆より頭が良いだけあってか、冷静だ。
「いい加減にして下さい、当初の予定はなんですか…! 目的を見失ってますよ…!! 美香さんを貶めた奴を懲らしめるんでしょう…!!?」とまぁ、なんとも的を得た言葉。
けど、ルビーにはそんなの関係無かった。つーかうるさかった。
「凡人は黙っていて下さいな。」
「は、はぁ・・・!?」
ルビーは相手をも見ずに言う。
そんなルビーに腹を立てたのか、リックは「だ、誰が…! 凡人なんですか…!」と一歩、近付いて、続けた。
「貴女は良いですよね…! 元々…!能力も高ければ地位もある…!! それに、頭だって良い・・・!! 僕は、地位も力も無い!! 強みに出来るのは、頭脳ぐらいで・・・! どれ程頑張って勉強したか・・・!! 貴女には分からないですよ・・!! だから、見下しているんでしょう・・・!!?」
絞り出すような、その心の声に、私達は思わず耳を傾けた。
馬鹿みたいに笑っていた貴族達も、思わず…。
「分からない?」
ルビーはリックを見つめた。
真っ直ぐと、その深い緑の瞳で。
「では貴方には分かるというの? 皆の手本にならなければいけない地位の高さと能力が。」
「な、」
「私が何の努力も無しに淑女の手本となったとお思いで? 私が何の対価も払わず国民の火力を賄っていると? 私が、どれ程自分を押し殺して、我慢をしてきたか。 貴方はご存知なのですか?」
「それ、は…」
「努力を怠る凡人に、気安く話しかけられる筋合いはないわ。 お分かり? 馬鹿に付き合っている暇はないの。」
「っ・・・、」
リックはその深い緑の眼差しが、どんな意味を持っているか、どんな事を伝えたいのか、分かった。
何故なら頭が良かったから。
だから、
次の言葉が出てこなかった。
けど、他の馬鹿には伝わんないらしー。
私でも、ルビーの伝えたい意味が、分かるっつーのに、私より馬鹿とかー、うけるんですけどー。
「私達が、努力をしていないと言うのか…!?」
ジェード殿下が、そう言ったのを皮切りに、リック以外の取り巻き男子が口を揃えて言う。
「その通りだ…! 貴様と同じ公爵家、その責務を負っているのは私とて同じ事…!!」と、クラウス・リー。
「この私だって来る日も来る日も鍛錬し…!! 副団長にまで登りつめたのだぞ・・・!!!」と、ニック・ナントカ。ごめん、結局名字分かんねーわ。
「そうだ…!! 私だってこの国の王子・・・!! 貴様が王妃教育をされたなら、私こそ国の王になる為・・!! 日々勉学に励み、国民の手本となるよう努力をしているのだ・・・!!! 何を自分だけがさも偉いような口振りで・・・・!!!」
「いいえ・・・!」
巻くし立てるようなジェード殿下に、いい加減ルビーも苛ついてるらしい。
また、その握り締めた拳に、灼熱の炎が灯っている。
「貴方達は、奢っているわ・・・! その地位に・・・!! その地位に甘んじて、奢り高ぶっている・・・! 日々の努力!? 笑わせないで頂戴…!! なら何故、貴方は団長ではなく、副団長なの…!? 貴方は何故、暑い季節には国民にその氷を与えないの…!? 王になる為!?国民の手本…!? では貴方は、何故…!! 私と婚約を破棄したの…!?自らが例え王にならずとも、クロウ殿下がいらっしゃるからでしょう…!!?」
「何を、不敬な・・・!!!」
「人の気持ちも分からぬ悪魔が…!!」
「奢っているのはどっちだ…!!」
ジェード殿下は掌に電気をバチバチ。
クラウスは足元に氷をガチガチ。
ニックは、己の拳を握り締める。
「あぁ、もう、馬鹿に付き合っている暇はないって言っているの・・! 分からないの…!? 良いわ…!! もう、全て灰にして差し上げます・・・!!!」
おーおー、なんかもう大変な事になっちゃってんじゃん。
止まらない、止まらない。
えー、えー?どうするー?みたいな感じで、マリンもペリドットも、アキナも私も目ぇ見合わせてっけど。
いや、つーかニックはそんな腕広げんなし!
見えてっから…!
コーコーセーにそれ見せちゃいけないやつだから…!
そして漫画の最終決戦バリの雰囲気に、一番怒らせちゃいけない人を怒らせたらしい。
「・・・・・おっ前ら…、黙って聞いていれば・・・・」
え、えー。
暗雲がスゴイんですけどー・・・・。
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