第21話 もじもじくん
「美優、ルビーから頼まれたものだ。」
「ん? ・・・・あぁ!あんがと!」
「まさか届いていなんて驚いたよ。」
「な~~。 なんか皆びっくりしてたし~~」
きょう、朝イチでデンカから渡された金の紋様がレベル高めな封筒。
それは舞踏会の招待状だった。
ミカちゃんも来るらしい舞踏会。
絶対ミカちゃん、もうひとりのデンカを独り占めする気だし。
ま、ルビーが婚約破棄したらお好きにどうぞ?だけど??
「って、あれ?」
「どうした?」
招待状を詳しく読んでみると、《婚約者・夫婦がどちらも参加する場合は、入場手続き緩和の為、一緒にご参加下さい。》と綴ってある。
「これ、」とデンカに見せると渋い顔。
「正式に結婚をしてから遊ぶ者達が最近多くてな・・・。招待状は夫婦だとひとつしか出さないんだ。王家からの招待状がないと入場出来ないし、本当にその人にも送ったのかどうか手続きが手間取ってそうなったんだ…。」
「何ソレ、めっちゃ面倒いじゃん。あたしらの世界だとデジタルでピ!だけど。」
「デジ、タル…?」
こて。と首を傾げるデンカ。
え?なに?女子を殺す気なの??それ他の女子の前でやったらダメなやつじゃん??
ぜったい瞬殺だし。
「あーー、うーーん、ここで言う魔法みたいな??つーかそれこそ魔法使えないわけ?このご時世紙媒体とか!!うける!」
「そうか…。いや、昔からの伝統、名残で招待状だったが…。確かにその方が早いな…。」
「それはそれとして、何で赤の他人の婚約者同士も一緒に参加なの?あたし達婚約してるんで…!!って他の人に見せ付けたいから?」
「・・・・まぁ、あながち間違いではない、かな。 他人の婚約者に卑しい感情を持つ人間もいるのは確かだ。」
あーね~。
他人のモノ欲しがるのね~。
ミカちゃんとかミカちゃんとかミカちゃんとか??
でもあの子は《他人のモノが》っつーより、世界の中心で居たいタイプかなー?
あれ、じゃあルビーはもう一人のデンカと一緒に入場…?
いや、ミカちゃんそれ絶対許さなくね?
あ、でも婚約破棄するんだったら関係無い??
「それに貴族は誰と、いや、どこと婚約出来るかによって力関係が変わってくると言うのもある。」
「んーーー・・・、ん??? この国の貴族は、魔法が強かったら地位も高くなるんじゃないの?? どこと結婚しても個人の能力は変わんないんでしょ?」
「・・・・・そう、でありたい。が正しい返しになる。 権力を持っている、つまり元々魔力が強くて貴族になった家系は自分の地位を意地でも保ちたいんだ。自分達より力の強い能力、家系が出てくるのを一番に恐れている。 乗し上がりたい没落寸前の貴族は必死だよ。」
「ふぅ~~~ん…、」
ん? じゃあそもそも、ルビーは婚約破棄なんてしちゃっていいわけ…?
ルビーの家系ってめちゃくちゃ地位高いんっしょ…?
それにキズモノになるつってたっけ?
「まぁ、権力だけしか見ていない人ばかりでは無いけどな。」
「ふぅん…。」
「美優だってそうだろう? わ、私もそうだがな…?」
まぁ?
ルビーが自分で決めたことだし。
異世界の私がとやかく言えることでもないし~
私は婚約者なんかでルビーを判断しないし、それに友達だし?
家柄とかカンケー無いし!
そもそも、あんなヤロー要らねぇし。
そう自分の中で勝手に解決ゾロリしてたら、目の前のデンカはうじうじ、もじもじ。
「で、その・・・なんだ・・・、」
「え、うん?」
何でちょっともじもじしてんの!
可愛い!
デンカのくせに!
「その、エスコー ──ガラッ、「あら、相変わらずお早いですわね」 ・・ト、は、・・・ごほん。 ルビー、お早う。」
「はよーっす。」
いつも通りの時間にルビーは到着。
ルビーは教室に入るなりデンカの顔を見て「あら?」と首を傾げる。
うん。可愛い。
「・・・クロウ? まぁ・・・お邪魔したみたいですわね…。わたくし教室の外からやり直すので、どうぞ殿下続きを、」
「っ~~~!!いい!またにする…!」
「???なんのはなし?」
「何でもないっ…!」
最近デンカも感情表現が激しくなってきた…。
生理前…なの?
「ごほん。で、美優・・・」
「あい?」
「今日の、放課後は、時間あいているか? その、話が、」
「あー、今日?むりむり!予定あんの!」
「…!! ・・・そう、か。仕方ないな…。」
あからさまにガックシ肩を落とすデンカ。
え?そんなに重要なハナシなの…?
でも今日はアキナとフィッティングする約束してっし…、舞踏会まで時間無いし…、アキナはミカちゃんの分まで作んなきゃだし、そもそもアキナ自身のも自分で作るって言ってたし…。
うん、やっぱ無理。
「どうしてもか…」
「え、むり。 平民棟行くし、どれだけ時間掛かるかも分かんないし。 まじむり。」
「・・・・まじ、むり、なのか…。」
「ぶふっ…!」暗雲立ち込める様にルビーは耐えきれず吹き出した。
「おい…、ルビー・・・」
「もっ、申し訳御座いません…! だって、あんまりにも…!ぐ、ふっ…!」
「ルビ~、全然淑女じゃないんですけど!?」
「今は勘弁してくださいませ…! はぁ~~~、可笑しい…!」
「と、に、か、く!今日はむりっ!」
「ぐぬぅ・・・、分かった、また今度にする…」
*************
放課後、平民棟にて・・・
「やばーーい!めっちゃかわーー!」
「やっぱアタシって天才ね! とってもよく似合ってるわ!」
鮮やかなオレンジのドレス。
何枚も重なった、シルクシフォンのラップスカートは、くるくる回ると綺麗に広がる。
ラップスカートの下は、サマーウールのスーツみたいなショートパンツで、特に立ってるだけだったら脚とか見えないけど…、それで良いのかな?
(いや透けてんのは透けてんだけどね?)
上半身はビッグサイズのテーラーみたい。
その襟を抜かした感じで、なんかやっぱり男性のスーツを意識してるっぽい。
「最初とちょっとデザインを変えたの。 美優にね、言われて、舞踏会…女でもテーラードって、着ても良いんじゃない?って思ったのよね。」
「当たり前じゃん?別に何着たって良いっしょ。 女だってカッコ良くキメたいじゃん?つーかキメるから!任せて!」
「うっふふ! ほんっと!美優と居ると元気出るわっ!」
男っぽい女だって居るし、そっちのが向いてる人だっている。
宝塚だって男役の人、女から見てもカッコいいもんね。
ここの人達は、女の人…スーツって着てないしね…。
みんな綺麗なドレスばっかり。
皆が皆、ふりふりのドレスや、色気のあるセクシーなドレスが似合うわけじゃない。
それぞれ似合うもの着て、自分を表現した方がよっぽど人生楽しいと思うんだけどなぁ。
似合わないのが…、好きならまぁ…、うん…。
「ねぇ?美優?お願いがあるんだケド…」
「うん?」
ぽやぽや考え事をしてたら、アキナが何ともまぁ可愛くおねだりポーズ。
「あの、ね。もし、相手が居なかったら、ね。 一緒に舞踏会に、参加してくれないかしら?」
アキナもなんかデンカみたいにもじもじ…。
何なの?可愛いの?
皆まとめて可愛いの??
「一緒に参加?いーよ?別に」
「え?ほんとう!? えと、アタシ性別上は男だからエスコートって形になるんだけど…、本当にいいの?相手居ない?」
「えー?いいよ~、全然おっけ!相手とか居ないし~」
「そもそもあたし誘う男なんて居ないっしょ~!」なんて思いながら快く了承。
そしたらアキナは安堵のため息で、「はぁ~~!よかったぁ!実は不安だったのぉ~!」と言う。
「えー?どーして?アキナ堂々としててカッコいいけど」
「いやぁん…、だぁって~、いくらアタシの心が女の子でも良いって言っても、世間的には、ねぇ…、まだまだだし…、美優が、側に居てくれたら、心強いなぁって・・・んもう!恥ずかしいわっ…!」
ぷりぷり頬っぺに手を当てながら恥ずかしがるアキナ。
マジでそこらの女の子より可愛いんですけど!?
「居るしっ!いくらでもアキナの側に居るしっ!!」
ぎゅむっと抱き付くと、やっぱり男の子だからちょっとゴツゴツしてる…。
うん…、意識しない意識しない…!
フツーに男だったらイケメンだけど…!!
抱き付いて良いのか不安になるけど…!!
「んっふふ!ありがとっ!なんか…、女の子同士のお友達って、こんな感じなのね…、ほんとう…、ありがとうね」
染み入るように言うから、ちょっと涙出てきそうになんじゃん!?
そして女の子同士って言うぐらいだから、余計な心配は要らないらしい。
私は、アキナの言葉を噛み締めるように「うん…!」と頷いた。
「ねねっ!それよりっ!見てほしいものがあるのよっ!」
急にきゃぴきゃぴして、大きな自分の鞄からターコイズ色のなにか。
「実は一緒に舞踏会行けるかなって思って、先に自分の服も作っちゃったのよね…!」
「隣に並んで似合うドレススーツ…、うふっ、先走っちゃって恥ずかしいわ…!」って言いながら自分にあてがった、鮮やかなターコイズカラーのドレススーツ。
よく見ると生地はペイズリー柄だ。
スーツと言っても唯のパンツではなく、スコットランドの民族衣装のキルトみたいな、スカート。
その下にはナマ足が見えないように、スポーツタイツの様なもの。
「えー!着て着てー!」とノリで言ったけど、いざ着てんの見ると、いやちょっと待って。
えげつないほどにジャニーズ。
まじでえげつないほどに。
ライブのステージ衣装かよ…!
ポテンシャル高過ぎぃ~!
「うふっ!似合ってるかしら?」
「うう、うん…! 引くほど似合ってる…!」
「・・・それ褒めてる?」
「褒めてるよ…!マジで…!似合いすぎて吐きそう!」
「ありがとっ!」
これ言葉発っさなきゃ女子が群がるやつ…!
やば・・・、当日はアキナに本気でメイクしてあげよ…。
「んもう今から一緒に行くのが楽しみだわっ…!」
ホントに女子より可愛くきゃぴきゃぴするもんだから、私も楽しくなっちゃって「ねーー!」と手を握った。
握った手はやっぱり男の子だったけど、うん、気にしない!
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