第3話:異世界流お子様ランチ(異世界ファンタジー&兄妹&グルメ)



 お子様ランチ

 それは、お子様だけが口にすることを許されるグルメ界の幼帝ようていである(諸説)。



***



 俺の名前は三上みかみ健太けんた。高校1年生だ。

 俺には、可愛い妹がいる。名前は莉奈りな。彼女は小学6年生だ。


 とある冬のこと。

 莉奈は俺に、とある「儀式」を済ませたいのだと言い出した。


 ──私、お兄ちゃんに、お子様ランチをおごってもらいたい!


「分かったよ。我が妹よ」


 俺はバイトで得た5千円札を鷲づかみにし、莉奈を連れ立って街に繰り出した。

 そして、駅前にあるファミリーレストラン「ロイヤル・ガスト」のドアを引く。



 まさか、店の入り口が異世界への門だったとは。三上健太、一生の不覚である。



***



「お兄ちゃん。お子様ランチは?」

「まぁ待て。妹よ」


 俺は、ロイヤル・ガストの店長……ではなく、玉間に居座る王とおぼしき老翁ろうおうを睨み付けた。


御老輩ごろうはい。俺は、愛する妹にお子様ランチをご馳走ちそうせねばならない。今すぐ、元の世界に俺たちを戻してくれ」

「ならぬ!」


 王は、とにかく頑固者がんこものであった。王は、何が何でも俺を魔物退治の英雄に仕立て上げたいらしい。


「お兄ちゃん、お子様ランチはどうなっちゃうの……?」


 平行線が続く議論に、妹はほおを膨らます。


「まぁ待て。妹よ」


 俺は、発想を切り替えることにした。俺は、王の話に適当に相槌あいづちを打って王宮を出た後、ロイヤル・ガストのライバル店──ではなく、世俗の世界から距離を取る大神殿の司祭長に頼み込み、莉奈の安全と衣食住を確保した。

 そして、俺は王から貸し付けられた武具を手に、旅に出た。


「1週間だッ! 1週間後に、俺は莉奈に、お子様ランチをご馳走してみせる!」

「おにいちゃぁ────────ぁぁぁあああんっ!!!!」


 これが、後に語り継がれる「救世きゅうせいの旅」の始まりであった。



***



 ──1週間後。俺は大神殿に帰ってきた。


「我が妹よ。お兄ちゃんが帰ってきたぞ!」

「お帰り! お兄ちゃん!」


 後で聞いた話だが、莉奈は、異世界を「キッザ●ア」的なところだと思っていたらしい。莉奈は1週間の間、古代ローマ風の神官服を着こなして、司祭長の仕事を手伝っていた。さすが俺の妹。何を着ても似合うし、何をやらせても優秀である。


 俺は、司祭長から厨房ちゅうぼうを使う許可を得た。そして、冒険中に知り合った腕利うでききの料理人を三人ほど招き入れる。


「お兄ちゃん。これから何が始まるの?」

「約束通り、莉奈にお子様ランチをご馳走するのさ」


 俺は彼らに、冒険者が集う街で手に入れたマジックバッグを渡す。

バッグの中には、俺が採取した「食材」が詰まっている。


「──アニキっ! あんたが言ったレシピ通りに作るぜ!」

「──魔界の美食を極めた私に、不可能な料理などない!」

「──神々の舌をうならせた私の手に掛かれば、異界の皿など造作もありませんわ」


 料理の鉄人たちは、食材を片手に頼もしいセリフを語る。


「莉奈、俺たちも少しだけ手伝うぞ」

「分かった!」


 俺と莉奈は三角巾を巻き、厨房の片隅に立つ。


「──まずは、アニキが絞めた怪鳥ロックだ!」


 俺をアニキと慕ってくれる人間の料理人ガルスは、皮を剥いで下処理を済ませた怪鳥ロック胸肉むねにくを木板に置く。つやの良い薄桃色うすももいろ肉塊にくかいを、さいの目に刻む。


「莉奈、トマトのヘタを取ってくれ。俺は米粒を仕分ける」

「うん」


 莉奈は、小ぶりなトマトのヘタを剥がす。

 俺は、魔界の辺境で手に入れた米粒から、割れたものや黒ずんだものを除ける。


 作業の間。

 俺は、莉奈に冒険中のエピソードを語る。


「ローマ風の異世界だから、トマトくらい難なく手に入るだろうと思ったんだが、あてが外れてな。海を越える羽目になった」

「えー! お兄ちゃん、大冒険したんだね」


「いざ現地に行ってみたら、──その赤い実は毒だ。食うな! ってシャーマンに言われて。しかも、良く分からないうちに生贄にされそうになるし。いや。本当に大変だった」

「スリリングだね」


「その代わり、海を越えるのに使った不死鳥フェニックスと仲良くなって、卵をもらえたんだ。肉、トマト、米、卵。何ができると思う?」

「えっとね……分かった! オムライス!」


「正解! あと、一緒にトウキビもゲットしてきたから、今日のスパゲッティーはコーン入りだぞ」

「やったね!!」


 俺は、ボウルに白粒しろつぶを満たす。本当は一度いてから冷や飯にして使っても良いのだが、この世界には「炊く」という調理行為が存在しない。米は、生から炒めてパエリアみたいにするのが常識らしい。生米でチキンライスを作ると恐らくピラフっぽくなるが、ふわふわ玉子とトマト味に上手く誤魔化してもらおう。


「──拙者の妙義みょうぎを見よッ!」


 一人称が拙者の料理人ケテグスは、褐色肌のオーガだ。彼は今、俺がレクタ島で退治した狂い牛の肉と、同じくエリマントス山で退治した猪の肉を、包丁と腕力でミンチにしている。同量の砂金と交換されるという香辛料を惜しみなく臭み消しに使い、玉葱たまねぎと合わせてこねる。彼いわく、チャクラを練る感覚と似ているらしい。


「ミニハンバーグは、俺が食いたかったから追加した」

「お兄ちゃん、余裕だね」


 ヘタを取ったトマトは俺が預かり、手早く刻んで深皿に移す。酢、塩、香辛料と混ぜ合わせ、すりつぶす。


「──神の料理アンブロシアに勝るとも劣らない逸品いっぴんを用意しますわ!」


 ですわ! が口癖くちぐせの料理人タナクイルは、ニンフと神様のハーフだ。彼女は今、悠久の大地母神イシュタルの雌牛ペットからいただいた牛乳と、不死鳥の卵黄からできたカスタード・プディングに生クリームをホイップしている。他に、彼女の手元には色とりどりの果物が用意されている。


「お兄ちゃん、デザートもあるの?」

「お子様ランチにプリンがないと寂しいだろう? 不死鳥の卵はいっぱいもらったからな。プリン自体は難しくないさ」


「フルーツもいっぱいだね」

「揃えるのに苦労したんだぞ。黄金おうごん林檎リンゴ楽園エデン蜜柑ミカン桃源とうげん白桃はくとうに。西洋梨せいようなし、それから、実桜サクランボ。この世界、蜂蜜以外の甘味料って少ないんだよ。酢酸鉛は怖くて使えないし」

「さくさんなまり?」


「鉛糖って言って、甘いんだけど、毒なんだ。ローマ人が早死にした理由らしい」

「へぇー」


 俺は、完成したケチャップをガルスに渡す。

 次いで、ケテグスが俺の脳に念力を送った。


『──御仁。拙者はこれより、海老フライに取り掛かる。ミンチ・ステーキの焼き加減を見届けられたし』

「おぅ! 海老フライはお子様ランチの花形はながただ。頼むぜ」


「──承知!」


 俺と莉奈は、鉄板の上で弾けるミニハンバーグに心を躍らせる。


「海老フライは、こっちでも海老のフライなの?」

「海老は普通に海老だったな。ただ、ヨルムンガンドを退治したり、クラーケンをやっつけたり、アーケロンの産卵をヒドラから守ったり、海辺は、とにかく危険がいっぱいだったな」


「生き物がたくさんいたんだね」

「クラーケンの烏賊いかリングは、油ぎれが悪かったから、今回はナシだ。代わりに、蜃気楼しんきろうのポタージュを付けるぞ」


 厨房に、司祭長が入ってきた。


「君から渡された鍋の中身。良い感じに温まってきているよ。ホタテとハマグリを良いところ取りしたような、素晴らしい香りだ」

「底が焦げ付かないようにだけ、御願いします」


「任された」


 司祭長は戻っていく。


「──秘術、パン粉隠れの術!!」


 ケテグスは、下処理を施した海老に不死鳥の卵液と削った堅パンの粉をまぶし、黄金色おうごんいろの熱した菜種油なたねあぶらに投じている。パチパチっ、と軽快な音が、厨房に弾ける。

 それに重ね合わさるように、ガルスがチキンライスを炒め始める。アクセントに刻んだ化けキノコも入れ、玉葱と一緒に加熱。頃合いを見て、米や肉を投入する。

 俺と莉奈が小手で返したミニハンバーグも、ジュージューと良い音色を奏でる。僅かに焦げた匂いも堪らない。


「──最終奥義、油落とし!」


 ケテグスの決めゼリフが飛ぶ。何てことはない。琺瑯製ほうろうせいのバットに金網かなあみを重ね、揚げ物をそこに載せることで無駄な油を落とすというだけの話だ。


「──ミスター健太。カスタード・プディングのフルーツ増し増し盛りが完成しましたわ!」


 タナクイルは、ガラス皿に完璧な芸術品を盛り付けた。褐色爛々かっしょくらんらんたるカラメルと薄黄色うすきいろのプディングが見せる見事なコントラスト。色彩美しきさいびあふれる果物は、貴婦人の首飾りに等しき豪奢ごうしゃさをかもし出す。


「コース料理ってわけじゃないから、先に食堂に並べておいてくれ」

「了解ですわ」


「──アニキ! オムレットに入ります!」


 手際の良いガルスは、既にチキンライスの盛り付けを終えていた。彼は、半熟のとろとろオムレツに取り掛かる。


 お子様ランチの木皿は、名工揃いで名高いドグウェル族の職人に彫らせた特注の逸品だ。メインディッシュたるオムライスと海老フライ、ミニハンバーグをよそう大エリアと、ポタージュのカップを載せる小エリアに分かれている。勿論、食具もセットで作らせた。


「──アニキ、いくでぇ!」


 ガルスは、フライパンから「金色こんじきまくら」をチキンライスに落とす。


「緊張の一瞬だね……!」

「いざ、勝負の時……!」


 俺と莉奈は、ケーキ入刀よろしくナイフを取り、ふっくらオムレツの稜線りょうせんでなぞる。ぱっくりと割れた切り口から、得も言われぬ錦色にしきいろのマグマがあふれた。


「合格!!」

「だな!!」


 俺と莉奈はハイタッチを交わす。


「他もジャンジャン行きまっせ!」


 そう。お子様ランチは人数分用意されている。せっかく集めた食材が勿体ないという事情もあるが、ここまで尽くしてくれた三人の鉄人と、莉奈を預かってくれた司祭長への恩返しという意味もある。


 俺は、マジックバッグから「旗」を取り出した。旗の部分には、恐らくは世界一簡単な「紋章」──日の丸をあしらってある。


「オムライスには、旗を立てなきゃな」

「さすがお兄ちゃん。抜かりないね!」


 莉奈が旗を立てたものから、ガルスとケテグス、俺が食堂へと運んでいく。

 食堂には、プリンアラモードに飴飾りを添えていたタナクイルと、ポタージュをよそい終えた司祭長が待っていた。


「完成したようだね。では、皆でいただくとしよう」


 俺と莉奈、司祭長、そして3人の鉄人は席に着き、一言「──いただきます」と宣誓する。


「はむ!」


 莉奈は海老フライのっぽをまむなり、大口でかじり付いた。グルメにおいて、一番美味い食い方がマナーである。我が妹に、非の打ち所なし。


「ん~~!!! ぷりぷり~~~」


 莉奈の頬がとろけ落ちそうなほどにゆるむ。可愛い。スゲぇ可愛い。俺は、この顔を見るために頑張ってきたんだ。


「ほほぅ。美味ですな」


 司祭長は、顎髭あごひげに衣が付くのも気にせずに海老フライを完食する。俺が冒険していた感覚では、この世界は基本肉食を戒めない。食事上の堅苦しい禁忌はなさそうだった。


「オムライスぅっ!!」


 莉奈は、オムライスに木匙きさじを入れる。湯気も冷めやらぬぬくもりの塊が、妹の口に運ばれる。


「~~! ~~~っ!」


 至福。莉奈はそう言う顔をしている。体をメトロノームのように揺らし、全身で美味を表現している。俺が振り返ってこの経験を本にしようと思ったとき、彼女の表情は何て表現すれば良いんだ? とりあえず、──めっちゃ可愛いとでも書いておくか。


「我ながら完璧な出来だぜぇ……」


 チキンライスとオムレツに大功を挙げたガルスは、トロットロの玉子とトマトの旨みをまとった飯を木匙で器用に混ぜ合わせ、一匙の黄金比を創り出している。あれが、世に言う錬金術というヤツか。


「うむ。この、とろみの濃ゆいスープ。パンと合わせるのも一興か。……うむ!」


 ケテグスは、気の利いた司祭長が用意した黒パンに蜃気楼の貝柱をのせ、一口に頬張る。見るからに美味い。絶対に美味い。貝類特有の濃厚な旨みは、スープ類のとろみと合体することで無敵の境地に達する。水を得た魚。否、チャウダーを得た貝である。


「お兄ちゃん、」

「ん?」


「お兄ちゃんも食べようよ」

「ん? ぁあ……そうだな。皆の笑顔が眩しくて、ついつい」


 俺は木匙を取り、オムレツのベールを掻き分ける。怪鳥と聞けば不穏だが、要は肉付の良い巨大鳥である。米と玉葱に大半の旨みを譲り渡してもなお、賽の目肉はしっとりさを保っている。俺は一口それを食い、すぐに二口目に移る。真に舌鼓したつづみを打ち鳴らした者は、自然と二口目を開くものなのだ。これは、世界の理に等しい。


「絶品だな……」


 俺は、若干の寄り道までして手に入れた化け猪と狂い牛の合い挽きハンバーグにフォークを入れる。溢れ出す透明な肉汁が、何とも目にまぶしい。切り分けた面から漂う胡椒と丁子ちょうじの香りも、俺の胃袋を開放的にする。


「お兄ちゃん!」

「何だ?」


「ここはいつもとちょっと違う世界だから、高校生のお兄ちゃんがお子様ランチを食べても良いんだよ!」


 莉奈は、俺をビシッと指差していった。

 俺は、キョトンとした顔のまま、ミニハンバーグにかぶりつく。そして、すぐに自分の顔が蕩けるのを感じる。


「最高……」

「お兄ちゃん、良い顔してる」


 俺は、ミニハンバーグを二口半で平らげた。


「……しかし、果物もここまで飾り立てると、もはや超一級の工芸品ですな」


 司祭長は、プリンアラモードに熱い視線を送る。限界まで澄んだ硝子ガラスの容器は、競い合うように並ぶカットフルーツの美貌びぼうと、もはや貫禄かんろくに満ちたプリンの艶姿あですがたを余すことなく示している。最後に添えられた飴飾りは、追い風に乗る縦帆たてほの如く、鼈甲色べっこういろの翼を広げている。


「カスタード・プディングのフルーツ増し増し盛りは、その甘露かんろにおいて、全ての工芸品を圧倒しておりますわ」


 タナクイルは鼻高々である。


「左様。石膏せっこうは食えぬからな」


 ケテグスは、木匙でプリンを一掬ひとすくいする。える薄黄色うすきいろに、絶妙な黒褐色こっかっしょくこうばしさをえるカラメル層。これだけを切り取っても、大粒の紅玉こうぎょくめ込んだ純金製の指輪に匹敵する神々しさである。


「んん、これぞ甘露の極地!」


 ケテグスは、すっかりプリンと虜となる。


「玉子って、生で飲む以外に色んな使い道があるんだなぁ」


 ガルスは、しみじみと語りながらフルーツまで平らげる。


「このあめも可愛くて美味しいよ!」

「喜んでいただけて何よりですわ」


 莉奈とタナクイルは微笑み合う。


「いやはや。この度は、健太殿の御陰で、世にも珍しいものをいただきました」


 司祭長は、助祭に食後のハーブティーを用意させる。司祭長のガラス容器には、クリームの筋すら残っていない。フルーツ片で拭ってまで食べるとは、もはや妹と同じ境地に達したと言っても差し支えあるまい。


「我が妹を預かってくれた、せめてものお礼ですよ」


 俺が朗らかに答えた、その刹那。

 食堂の門が開いた。


「──ケンタ! ケンタ・ミカミは居るかっ!」


 現れたのは、7日ぶりに会う王の姿であった。


「陛下。困りますな。そう易々と神殿に踏み入られては……」


 司祭長が制するよりも先に、王は俺の手を握った。


「え?」

「ん?」


 俺と莉奈は、首を傾げた。


「ケンタ・ミカミ。君の活躍により、世界は救われた。ちんより感謝申し上げる!」

「世界が、……ですか?」


 俺は聞き返した。


「お兄ちゃん、世界救ったの!?」


 莉奈が、驚きと尊敬に満ちた眼差しで俺を見る。凄く嬉しい。だが、肝心の俺にその覚えがない。


「ぁー。陛下、いったい何がどうなっているんですか?」

「? ぁあ。お前が海蛇や人食い猪を退治して回ったり、不死鳥に人間の心意気を示したり、魔王に兄妹愛を説いたり、地母神を言いくるめたりしてくれた御陰で、世界の終末が無期限延期になったのだ」


「ははぁ、……なるほど……、……?」

「何か良く分かんないけど、私は、お兄ちゃんならできるって信じてたよ!」


 莉奈は、ギュッ! と俺に抱き付いた。満腹で少し苦しいが、至福である。


「高潔なる異界の英雄に最大限の賛辞を!」


 王が唱えるなり、俺と莉奈の頭上に七色の円形魔法陣が展開した。

 俺と莉奈は宙に浮き、魔法陣へと吸い込まれていく。


「健太殿と莉奈殿に、神々の祝福があらんことをっ!」


 司祭長が、俺と莉奈を仰いで祈りを捧げる。


「アニキっ! 嬢ちゃんっ! 達者でな!!」

「拙者どもにも、良き精進となったでござる」

「お二人に出会えたこと、一生忘れませんわ」


「こっちこそ、俺の我が儘に付き合ってくれてありがとな!」

「すんごく美味しかったよ!!」


 魔法陣に頭が達するその間際。俺と莉奈は精一杯に叫んだ。


「「ごちそうさまでしたっ!!」」



***



 俺と莉奈は魔法陣を通り抜け、王都の凱旋門──ではなく、ロイヤル・ガストの店先に戻って来た。


「わ。戻って来た」

「そうみたいだな」


 俺と莉奈が立っているのは、普段通りの駅前である。


「お兄ちゃん」

「何だ。我が妹よ」


「楽しかったよ! あと、美味しかった!」

「良かったな。……でも」


 俺は、ロイヤル・ガスの看板を見上げる。

 異世界の満腹感と幸福感は、現実世界にも引き継がれるらしい。さすがに、これ以上お腹に空きスペースはない。


「お店のお子様ランチは、明日食べれば良いんだよ!」

「なるほど、それもそうだな!」


 俺と莉奈は、満点の笑顔で帰路についた。











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