第13話 右腕を引っ張るもの

 つい、先程の話。


 落語の稽古の合間、ちょっと疲れたのでベッドに横になった。

 うつらうつらとするうちに、一瞬「ふっ」と眠りかけた。

 危ない、危ない。寝たら駄目だ。稽古の続きをしなければ。

 しかし、眠気は頭にずしりと重くのしかかる。

 ふいに。

 ぐいっ、と右腕が引かれる様な感覚があった。

 僕も引っ張る。向こうも引っ張る。

 しばらく、ぐいぐいぐいぐい、引っ張り合ううちに、はっ、と目を覚ました。


 右腕には、つい今しがたまで、誰かに掴まれていた様な感覚が残っていた。

 しかし、妻は仕事に出ており、僕の他に誰もいない。


 あれは夢だったのだろうか?

 それとも……。

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