第12話 肩透かし

 かみさんがまだ二十代だった頃。

 かみさんは当時、霊などを視てしまうくらい霊感があった。


 夜中、帰宅中に自宅のすぐ近くにある公園のゲートボール場にふと目をやると、光る球体がボンヤリと浮遊しているのが見えた。

 うわ、厭なモン見ちゃったな……。と思いつつ、かみさんは自宅のあるマンションのエレベーターに乗った。

 自宅のある階のボタンを押す。ゆっくりと扉が閉まる。乗っているエレベーターが上昇を始める。

 すると、2階でエレベーターが停まり、扉が開く。

 誰かが乗って来る気配もない。

 再び、扉が閉まってエレベーターが上昇する。

 3階で停まって扉が開く。誰もいない。

 ……何これ……? 絶対、最後、何か厭なのがいるパターンじゃん……。

結局、全ての階に停まり続けたエレベーターが、自宅のある階に停まって扉が開く。


 さっきのあのゲートボール場で見かけた光に関係している怪異が起こるかも知れない、と身構えながら、家に着いた。

 玄関のドアを開ける。

 自室に入る。

 何も起こらない。

 結局、特に怪異は起こらなかったそうである。

 肩透かしにも程がある。

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