第27話 党員#3 男のいない村 その27
朝起きて・・・さあ、これから村人たち(女)の命を救う旅が始まる・・・
なんて言われても今いちピンと来ない。
『あと、もうひとつ・・・』
「まだ何かありました?」
『髭剃り禁止です! これは絶対に守ってください!』
「え? 女性ってヒゲぼうぼうに生やしている男を嫌う・・・」
『その逆です! 女性には無い、その風貌。村人たちはそんなあなたに・・・』
「そんな俺に・・・」
『濡れてしまうんです!』
そうか・・・ 俺の髭ヅラはキャッチーな看板みたいなものなのか。
『私もその一人です!』
出発前、俺は敢えて服装を以前の登山者仕様に着替えさせてもらった。
驚いたことに・・・
洗濯されていて、破れていたであろう箇所も補修してあった。
靴なんて、とっくに劣化しているものと思っていたが・・・
全く問題無かった。 履き慣れたようにフィットしている。
俺は敢えて・・・の第二段。
出発前のキスはしない事にした。 なぜなら・・・
それは、おっぱじめる合図になってしまうから。
嫁さんも自覚しているんだろう。
「行ってきます」 『行ってらっしゃいませ』
という、ちょっと会社に行ってくるような感じの軽いアイサツにとどめた。
嫁さんから教えてもらった道案内によると・・・
俺が運ばれてきた暗いトンネルをひたすら光の点へ目指して行けばいいとの事。
俺が運ばれてきた時は・・・ それはもう、不安で不安で仕方がなかった。
けど、今は違う。
さて、あの二人は俺をどう迎えてくれるか。
いきなり言葉が通じているようになっているといいんだけどな。
おそらく出口であろう光の点に向かってサクサク歩いている俺だが・・・
歩きやすさも相まって感覚的にはもう到着したのか?と言った感じだった。
見覚えのある大きな木のすぐそばに、見覚えのある二人の女はいた。
二人とも腰かけて何かを食べている。
そこへ、俺。 そして、二人の女。 目が合った。
「!!」 「!!!」
まあ、そうだろう。 なんか照れくさいような、気まずいような。
二人はお互い顔を見合わせたり、俺をジッと見たりで・・・
「あの・・・ ただいま戻りました・・・」
「??」 「???」
やっぱ通じてねえーーっ!!
・・・これはもう、先が思いやられるな・・・
突然、胸ポケットのスマホからバイブ。
まさに助け舟だ! 他に誰がいるんだ?
『もしかしたら、お困りごとかと思いまして。』
「ありがたいです! 実は困ってます。」
『ちょっと代わっていただけますか? 黒髪のコに。』
嫁さん、ちゃんと分かってらっしゃる。最初からハンズフリーだ。
『Ohisashiburi! Genkini shiteta?』
「!!! ・・・RyoushuSama!!?」
思わず、差し出したスマホの裏側を見る黒髪女。 無理もない。
魔法のような未知の道具を今、目の当たりにしているのだから。
『Ne,Mitemite! KonoHanakazari,Tsukutte morattano!』
「・・・!! Omedetougozaimasu!!」
どうやら旧交を温め合っているようだ。
何を話し合っているのか・・・
相変わらず俺は理解できていない。
でも、気にならなくなった。
この世界、嫁さんと話(心)が通じ合っていれば・・・
もう、それでいい。
身体の方だって、子供が欲しくて欲しくてたまらない新婚夫婦みたいに
愛し合っている・・・つもりだ。
全裸同志で向き合えば・・・
トコトン性欲を満たしてくれる、とてもありがたい嫁さん。
美人な上、プロポーションも整っている。
性格に問題がある訳でもなく、気配り上手なのは想像以上だ。
俺が現世にいたままだったら、絶対に出会えなかった女性。
・・・現世? という事は俺ってヤツはすでに・・・
『おーーーい!! 電話、代わってくれますかー!?』
聞きなじみのある言語が聞こえて、ハッと我に返った俺。
『大事なことなので、基本中の基本をもう一度おさらいしますね。』
嫁さんの言う〝大事なこと〟は受け流すような聞き方をしてはいけない。
一字一句、肝に銘じておけ!が、俺の決めたルールだ。
『基本・・・村人は皆、臆病者と思ってください。 ですから、あなたは・・・
何もせずに、ただ見てるだけでいいんです。 逆に、あなたから行動を起こして
しまうと警戒されてしまって・・・ あの子たちの行動に制限がかかってしまう
だけでなく、その後の信用問題に関わってきますので。 くれぐれも・・・
注意のほど、よろしくお願いします。』
心得ました。 てな訳で、出発です。
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