第24話 党員#3 男のいない村 その24
『朝ごはん、用意できましたので食べていただけますか?』
嫁さんに何か怒っている様子は見られない。
それに、手に持っているスマホとソーラーパネルを隠そうとする行為はどう見ても
不自然だ。 ここは、堂々と振る舞うほかない。
「今行きます。」
俺は日の当たる場所を選んでスマホとソーラーパネルを置いた。
接続してあるので、正常に充電していれば画面に電池の図形が表示されるはず。
ソーラーパネル内の(互換)電池と本体の電池が劣化してない事を・・・
ただただ、祈るのみだ。
出発前の朝食。
味も食感もアボカドと言っていい、果実のざく切り。
見た目と大きさ、味もほとんどゆで卵と言っていい魚の卵。
それらに細かくふりかけられた、塩味と僅かな辛味のする香草。
デザートと呼ぶべきなのか、見た目はクレープそのもの。
中の〝具〟はハチミツと、おそらく木の実を粉砕して作ったペースト状の物。
そして、食後は湯飲みに葉っぱ一枚だけ入っている名称不明茶。
『私、気になっていたんですけど・・・』
来た!
『あなたが装備していた荷物・・・それ、なんですか?』
「うわぁ・・・なんて説明したらいいんだろうか?なんですよ、コレって。」
『私、あなたの記憶を全部読み込んでいたつもりでいたんですけど、それに関して
言えば無意識のうちに避けていたかもしれません。 なので・・・』
「教えます。もしかしたらチンプンカンプンかもしれませんが。」
俺はスマホの使い方、使い道、注意点を説明した。
嫁さんの知識欲は相当なもので、俺は質問攻めにあった。
何十回質問されただろうか。 でも、さすがに・・・
『少し・・・休ませてください。』
と、テーブルに突っ伏す嫁さん。
頭から、少し煙が出ている感じを想像してしまった。
「あの・・・大事なのは、これからこれをどう役立てるか?ですよ。」
『・・・そうですよね。』
俺はダメもとで、ある提案をしてみた。
すると、嫁さんは『実物を見せていただけますか?』と。
まあ、無理なのは分かりきっている。
でも、大博打を掛けてみたいという気持ちもあった。
一縷の望みってヤツに。
テーブルに置かれた、思いっきり亀裂が入っているタブレット。
それをガン見している嫁さん。
『要は元に戻ればいいんですよね。』
何か自信有り気に見えた。 まさか・・・?
もうひとつあったテーブル。
ちょうどドラム缶ほどの大きさで、材質は不明。
それに木の板を乗せてあっただけのテーブルだったが、それを外す嫁さん。
見ると、白い砂が敷き詰められている。 どれくらいの深さかは不明。
陽の光が当たると、一粒一粒がキラキラと輝く。
嫁さんは戸棚(?)で何かを探しているようだった。
持って来たのは、太い糸で編み込まれた手提げ袋。
何か重そうな物が詰め込んである感じ。
手提げ袋に入っていたのは、手のひら大の水晶玉(?)。
それを先ほどの白い砂の上に置いていく。 その数、計6個。
その水晶玉、中に光の線が一本入っているように見えた。
真上から見ると、その光の線が繋がって六角形になる。
嫁さんは、その六角形が正確な形になるよう微調整しているようだ。
『では、始めます。』
パァン!! 嫁さんの拍手(かしわで)の音だった。
すると・・・ 水晶玉の中の一本の線が鈍く光り始めた。
六個とも光り、六角形のネオンサインのようになると・・・
嫁さんはタブレットを裏返しにして、水晶玉の上に置いた。
『あとは、翌朝というか・・・お昼ごろまでこのまんま、です。』
「今日出発でしたよね?」
『あ、一日のびちゃいましたあー。』
なんだか少し嬉しそうな嫁さんだった。
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