第21話 党員#3 男のいない村 その21

・・・・・たすけて・・・・

・・・・・だれか・・・・・

・・・・・たすけて・・・・


その声を聞き、ハッ!と我に返ったかのように飛び起きた当時12歳の嫁さん。


「俺みたいに頭の中で響いた・・・?」

『そうです。 あの時の驚きは昨日の事のように覚えています。』


目が覚めてみると・・・ 

小屋の中で窓にはめ込まれた板の隙間から差し込んでいた日の光。


嫁さんの頭の中に、弱々しく微かにではあったが確かに聞こえたその〝声〟。


発生源は、どう考えて見ても・・・ すぐ隣にいる。


その時、俺の頭の中に二人の人物の映像が交互に現れた。

左肩から右脇腹辺りまで白い葉っぱがびっしりと貼られ、床に伏している少女。

長いストレートな黒髪、そして巨乳な・・・ 随分と世話になった、あの女。

嫁さんから送られてきたであろう脳内映像には、その二人の人物が現れていた。


「・・・と、いう事は?」


『そうです。 やっと出会えました。』


それにしても便利だ。 この脳内映像という画期的な伝達方法は。

この世界について何ひとつとして理解できていない俺でも「百聞は一見に如かず」

的な形で分かりやすく教えてくれる。


「明日に備えて、もう寝ませんか?」


『そうですね。』


いつの間にか灯されていた数あるロウソク(ホタルの様に点灯する)を、一本づつ

消していく嫁さん。


そして、ひとつにだけ淡い灯りが漏れている部屋に俺は案内された。

床一面に何か散りばめられている。


手に取って見た感じ、野球のボール大の・・・マリモ??            乾いていて、緑色ではなく黄白色した綿毛のようなもの。

けっこう強めに握っても潰れたりはせず、しっかり反発してくる。


これらに埋もれて眠るって、どんな感じなんだろうか?

ぱっと見は・・・湯を張ってないジャグジーにキッズルームのソレのようなたくさんのボールで埋め尽くされた感じ。


まあ、何はともあれ寝心地を確かめてみよう。

フチのところに後頭部を乗せ、枕代わりにして身を委ねてみる・・・


背中を含む身体の裏側全体を適度に刺激してくれる心地良さ。

思わず大きな溜息をついてしまった俺。


『ロウソク消しますね。』


頭の中でささやくように聞こえた嫁さんの声。

そこまでは覚えていた。



・・・見たこともない街中を何故か知っている呈で散策して・・・

・・・そう言えば、スマホの電池を交換しないとダメだったような・・・

・・・ケータイショップに入ると、女性店員にこう言われた・・・

・・・『見事な立ち姿です。』・・・

・・・「いや、カジュアルな格好ですよ、俺。」・・・

・・・何故かそう言い返せず、心の声だけに留まった・・・

・・・電池を交換してもらったかどうか不明のまま、店を後にする俺・・・


ここで目が覚める。

心地良い睡眠のおかげで、起床した感じも爽快だったのだが・・・

目覚めた原因は他にもあった。


いわゆる「感じてしまう」感触から始まり・・・


ムクムクと頭をもたげている、俺の〝突貫亀君〟を愛おしそうに握っている

嫁さんの何とも嬉しそうな顔が視界に入ったからだった。


『おはようございます。〝この子〟は元気に早起きしてましたよ。』









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