第18話 党員#3 男のいない村 その18
女性にしては何とタフな精神力なんだろうか・・・これって、修行なの?
と、言ったら嫁さんに失礼になるのかもしれない。 ・・・でも、
こんな若いうちから修行するのが嫁さんの種族だとしたら、それはそれでもう納得
するしかないんだと思う。
「修行」と来れば、あの大人気アニメに付き物(?)の事件やバトル。
2年目がそろそろ暮れようとした頃、その事件の方が起きてしまう。
『その頃、私の体調不良が原因かもしれなかったのですが・・・村全体を覆っていた〝結界〟の一部に、どうやら綻びが生じていたようだったんです。』
その結果、何が起きたかと言うと・・・
一人の男が侵入してしまった。
森にすむ動物は、それぞれが鳴き声を発し、他の動物や鳥に警戒を促した。
中には魔獣に変身してその男の侵入を阻もうとした動物もいたが、侵入した男は何か武器を持っていたらしく、動物たちは敢え無く倒されてしまったようだ。
そして、男は発見してしまう。
簡素な造りの小屋が所々点在している、低い山の麓にある小さな集落を。
『基本的に小屋は一人暮らしがほとんどです。扉も動物が入り込まないように棒を横に差し込むだけの、およそ鍵と呼べない至って簡素な構造でした。』
男は留守の小屋に侵入して食料を漁ったり、鉢合わせた村人には、武器の蛮刀をチラつかせ強姦に及んでいたようだ。
『この男が、いわゆる〝乱暴者〟と呼ばれていた存在ですね。』
でも、村人と〝乱暴者〟。 両者の思惑は奇妙に一致していたのだった。
男の方は、食料が手に入り、女を抱ければそれでよかった。
村人からしてみれば、本来なら儀式仕立てで行われるはずの〝その行為〟。
暴力を伴った不本意な形ではあるが、大変に貴重な〝子種〟を得られる。
村人たちは、男がここに飽きてそのうちいなくなるだろうと見ていたらしい。
だから、多少の事は我慢してきたが・・・
〝乱暴者〟は・・・やはり乱暴者だった。
少しでも気に障る事があると、殴る。 あるいは蹴る。
ムラムラしてきたら、気が済むまで村人を強姦。
更に小屋にある食料を手当たり次第貪るように食い、泥のように眠る、その男。
〝事〟が済んだら男にはもう用が無い村人は、男が眠っている隙に小屋を抜け出し、
仲間の村人の家に匿ってもらうなどして難を逃れていた。
男が目覚め、誰もいない事に気付くと・・・ブチ切れて、小屋を徹底的に破壊。
そして・・・新たな女を求め、点在している小屋を探し回る〝乱暴者〟。
運悪く見つかってしまった女は強姦され、誰もいなければ小屋を破壊する。
そんな〝攻防〟がしばらく続いていたが・・・
ある日、事件というべき出来事が起きてしまう。
〝乱暴者〟は、その場所も発見してしまった。
4本の石柱に大きな布を被せ、さながらテントのように覆ったその場所。
入口らしき花飾りの枠の部分を、手持ちの蛮刀で切り裂く〝乱暴者〟。
中は、中央部に石積みに作られた竃、その上に空の石鍋が置かれていた。
部屋の隅には・・・
恐怖で震えが止まらない、双子の少女。
〝乱暴者〟の目に留まったのは、少女たちの背後にある大きな甕(カメ)。
木の蓋でしっかり密閉されていて、柄杓(ひしゃく)まで置いてある。
男の嗅覚は・・・ その中身が何か、本能的に感じ取ったようだった。
双子の少女のうちの一人が、震えながら男の前に立ちはだかるが・・・
鈍い打撃音。男の振り下ろした蛮刀の刃先が少女の頭にめり込んだ。
赤い噴水が、少女の顔と衣装を真っ赤に染め上げてしまう。
その惨劇に、もう一人の少女は声も出ない。
〝乱暴者〟の蛮刀は容赦なくもう一人の少女に襲い掛かった。
すでに事切れて倒れている、赤く染まった少女。
肩から脇腹にかけて切り裂かれ、倒れるもう一人の少女。
カメを密閉している木の蓋を叩き割り、柄杓で中身をすくってみる男。
『〝乱暴者〟は、その中身が酒である事に気付き・・吞んでしまったのですね。』
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