第17話 党員#3 男のいない村 その17
嫁さんは俺に大事な話をしてくれてるはずなのに…
どういう訳か、頭に入ってこない。
というより、忘れてしまっている。
俺がそれに気付いて狼狽している雰囲気を、嫁さんは透かさず察してくれたようだ。
『心配いりませんよ。その時、大事な問題に出くわしてしまったとしても…』
「??」
『それらに関する内容が、ちゃんと思い出せるようになっています。』
嫁さんは頼もしげにそう言ってくれたが、やはり心配は拭い切れない。
『話を戻しますね。』
今度は気合を入れて、忘れないように聞き取ろうと思った。
とにかく、嫁さんの「講義」に集中、集中……
俺が全く身動きが出来なかった時、身の周りを世話してくれた二人の女。
その片割れである、長い黒髪のHカップ女の方。
その姿が俺の脳内映像に映し出された。 これも嫁さんの能力だろう。
『当時の私は秘術がまだ未熟だったため、彼女を見つけ出すのに約2年間もかかって
しまいました。』
話によると……嫁さんは両親から統治を名目に、ほぼ丸投げ同然でこの「村」に送り込まれたそう。 なんと、当時わずか10才でだ。
ここの村人たちは、全て女性であるだけでなく、言葉がさっぱり理解できない。
それは俺もそうだった。(今も解らないが)
そこで嫁さんはどうしたかと言うと……
村人たち、一人一人を見て回る…というより睨み付けていたらしい。
最初は気味悪がられ、警戒もされたそうだ。 時には迫害も。
でも、ちゃんと理由はあった。
嫁さんの『心の声』=テレパシーが届き、会話ができるかどうか?
それを確かめるためには、至近距離で睨み付けるしか方法が無かったとか。
しかし、村人たちに警戒され逃げ回られていたら、調べるどころではない。
困り果てた当時10才そこそこの少女は散々考えた末、ある方法を思い付く。
それは、村人にケガや病気が発生した場合、率先して治療にあたった事。
それこそ「回復魔法」のような〝秘術〟を駆使したのであろう。
それに、治療を施している最中は至近距離で患者を睨む事ができる。
こうして、少女時代の嫁さんは村人たちからの信用と信頼。それと……
調査結果を着実に積み上げていったんだそうな。
どのみち、村の貨幣価値も分からなかったため、金品を受け取る事はしなかった。
ただ、患者に施す「回復魔法」は想像以上に体力を消耗するらしく、ジェスチャーで
一回分の食事を要求したとの事。 さすがに。
こうして、「村」に点在する集落をひとつ残らず訪問、一人たりとも逃さないという
覚悟の旅が始まったのだった。
それにしても、村人たちは当時の嫁さんに自分たちの言葉を教えようとはしなかったのだろうか? という疑問に対し、嫁さんは…
『おそらく、鳥や動物に相対している感覚なんでしょうね。 私もその方が都合良かったです。』
ただ、漠然とした「当たりの人物」を発見するまで、ひたすらハズレに出会い続ける孤独な旅……
俺にはとてもじゃないがマネすら出来ない、と思ったが…
何故か、共感できる気がした。
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