第16話 党員#3 男のいない村 その16
今、確かに『女性しかいないからです』と、俺の頭の中に響いた。
そんなバカな。 男が何らかの原因で絶滅でもした、とでも?
・・・いや、そうでなければ俺なんかに興味も用も無いはず。
「ちょっと待った。 なんで男がいないんですか?」
『私も詳しい事はよく分からないんです。 両親から、この村を統治するよう
仰せ付かった当初から既にこんな状態だったようです。』
嫁さんは、自分の事を『領主』と言っていた。(そう聞こえた)
だったら・・・
「何か、対策は講じたんですか?」
『原因を突き止めようとしましたが、何も手掛かりは得られませんでした。
でも・・・ それよりも、先にやるべき事があったのです。』
それからの話は、さらに驚かされる内容のものが連続した。
『私は母から、「あなた自身に備わっている秘術は、村人たちを救うために
あります。」なんて聞かされました。 そんな事言われても・・・まず先に、
言葉を通じるようにしてよ!と、言いたかったのですが・・・
とにかく私の意見や反論は尽く封じられてしまいました。』
「・・・・・」
『姉たちからも、「あんたが何もしないで、ただその日暮らしをしていれば、
それだけ村人に負担がかかり、ゆくゆくは命の危険に脅かされる。
その状況を見て見ぬフリをするようだったら・・・
ウチらはアンタを絶対許さない!!」・・・と、まで言われてしまいました。』
「あの・・・ さっき、『言葉を通じるように』とか・・・?」
『そうなんです。 お互い文字を持たない文化なので、どうやって意思の疎通を
図るか? そのために、〝心の声〟を聞き取れる村人を探す事から始めました。』
「文字が無い・・・??」
『〝私たち一族〟は、体面さえしていれば頭に思い浮かべた映像を互いにやり取り
できるし、一応言葉も存在しますが・・・それは、あくまで補助的なものです。』
「・・・? あれ? でも、俺とあなたはこうして会話が成り立ってますよ?」
『私も秘術の鍛錬を重ねたおかげで、こうしてあなたと会話ができています。
で、私の〝心の声〟を聞く事のできる人が、もう一人。
あなたは、すでに出会っています。』
「えっ!?」
『あなたが初めて出会った村人の・・・長い黒髪で、胸が大きい方です。』
「・・・そうだったんですか・・・」
『彼女とは、かれこれ12年ほどのつきあいになります。 出会った当時は・・・
もう、それはひどい有様でした。』
話は長く続きそうな感じがした。
でも・・・男としてスル事はシタし、後は何もする事が無いのでトコトン話を
聞こう、と思った。
とにかく、今の俺は何も知らないに等しい。
この村の領主であるらしい嫁さんは、幸いな事に言葉が通じる。(テレパシー)
もう、大学の講義さながら、嫁さんには色々教えてもらおう。
何も知らないままだと・・・ やっぱり不安でしかたがない。
だが・・・これは気にするべきなのか、その不安な点が生じ始めていた。
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