第15話 党員#3 男のいない村 その15

『おはようございます。』


テレパシー女は、さほど長くない頭髪に花飾りを付けていた。


「その、頭に付けてる髪飾りって・・・?」


『古くからある、村人の風習を再現してみました。』


「何か意味がある物なんでしょうか?」


『これはですね・・・〝私は男性経験があります〟という証なのです。』


「えっ!?」


『さらに、子供が産まれると、花飾りに木の実の飾りが付け加えられます。』


「・・・・・」


テレパシー女の様子を見ていると、どうやら朝食の準備をしているらしい。

テーブルに出されたのは、どう見てもアボカドにしか見えない木の実(?)。

果肉の部分だけをていねいにスライスして、昨晩のゆで卵の黄身のような

料理にもかかっていた、細かく刻んだパセリのような香草がふりかけてある。

その隣には真っ白いお手拭きというか、ティッシュのような物が。


『それ、食べられるんですよ。』


テレパシー女(以後、嫁さん)が実際に食べて見せた。

アボカド(?)に包んでいる見た目は・・・

総菜屋さんのサツマイモの天ぷらをお持ち帰り、みたいな光景を連想してしまう。

新婚生活って、こんな何気ない朝食から始まるのか。

まぁ、こんな感じで嫁さんに見とれていると・・・


『お話があります。』


と、話を切り出す嫁さん。


『私、あなたに「結婚してください!」と言われた時・・・天にも昇る気持ち

でした。 こんなうれしい気持ちは産まれて始めて!  このまま、あなたと

一生暮らしていけたら、どんなに幸せだろうと思いました。』


これは・・・いよいよ、この世界独特の結婚式の話か?

と、思いきや・・・


『でも・・・ それではダメなんです。』


俺は自分の耳を疑った。


『この村を統治する領主としての私が・・・このように幸せを独り占めするなんて

村の繁栄に背く愚かな行為なんです。』


まだ、俺は自分の耳を疑っている。


『現在、村の民は絶滅の危機に瀕しています。 何故なら・・・』


信じられない言葉が俺の脳内に響いた。


『女性しかいないからです。』


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