第8話 党員#3 男のいない村 その8

『御気分はいかがですか?』


俺の頭の中でささやく、聞いた事があるのか無いのか、よく分からない

あいまいな感じのする女の声。


目が覚めてみると、木の葉で被われた天井・・・

そして、俺の顔を覗き込むテレパシー女の顔。

確かに美人なのは間違い無いのだが、どこの地域系か判別できない。

でも、どういう形であれ、言葉が通じるのはありがたい。

とにかく、今は混乱している頭の中を整理しなければならないのだが・・・


「すみません、のどが渇きました・・・」

『わかりました。 ちょっとお待ちくださいね。』


こんな言葉しか出てこないのか、俺は!

なんだか、情けなくなってきた。


テレパシー女が持ってきたのは、丼に近い大きさのお椀。

それに、何か添えてあるようだった。

ストローにしては、あまりに太すぎるソレは・・・


「これ・・・ キノコ・・・ですよね?」

『そうです。 これで水を吸えば、いっしょに薬の成分を取れます。』


それにしては・・・大きさ、色、形状がアレにそっくりさん・・・

御丁寧にも、先端の中央部分に穴が一ヶ所開いている所まで、ときたもんだ。


「・・・・・」

『抵抗があるのは分かります。』 


つくづく・・・

何も、そんなにそっくりさんじゃなくてもいいじゃないか、と思うほど。

『ですが、今はこれを用いる他、手段が無いんです。』


もう、何から何まで未知の施術に面食らいっぱなしだ。

ほとんど身動きできないでいるこの俺を・・・どういう訳か、二人の村人女同様、

甲斐甲斐しく世話をしてくれているテレパシー女。

何より『あなたを必ず復活させます』と言ってくれた。

それに応えないで、どーすんのよ、俺!

見ると・・・アルカイックスマイルを浮かべながら俺の行動を待っている様子の

テレパシー女。

そうとも。 次の行動を取らなければ事態は進展しない。

覚悟を決めろ! それは単なるキノコなんだ。

決して、他の男のをぶった切って添え物にしたヤツじゃない!

・・・よけいな想像をしちまった。

今、目の前にあるのは・・・キ・ノ・コ! そう、単なるキノコなんだあっ!!

と、意を決し、ソイツを咥えた。と言うより咥えさせてもらった。

どうか、変な味がしないでくれよ・・・


ああ・・・変態な女か、プロのオネーさんはこんな感じでしゃぶっていたのか。

吸ってみたら、何の事はない。 ほのかにハーブティーのような味がした。


『いかがでしたか?』


「・・・けっこうなお手前でした・・・」


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