第7話 党員#3 男のいない村 その7

テレパシー女は、先ほどの平たい箱を開けて何かを取り出した。

真緑色の、カエデに似た木の葉。 よく見ると、真ん中部分が大きい。

その女、何を思ったのか、アイスクリームの蓋に付いているアイスがもったいない

みたいな感じで、取り出した木の葉をベロ~っと舐め始めたのだった。

そして、舐めて光沢が出た表面を俺の背中に押し当て、貼り付けていく。


俺は郵便物か! とも思ったが・・・

これって、民間医療の一種なんだろうか?

それにしては、未知の施術だ。

と言うより、呪い(まじない)のニオイがプンプン漂う。

ハナハダ心配になってきたが、身動きが全く取れない以上、お任せするしかない。


その女は、木の葉を一枚ずつ俺の背骨のある位置に沿って、左右に5枚、計10枚貼ったようだ。

最初、懐疑的な俺だったが・・・

何だか背中の辺りがジンジン来ていて、体中の末端がピクピクと痙攣している。


『やはり、背骨のケガが原因だったのですね・・・』


ちょっと待ってくれ。 俺はそんな事、一言も話してない。

と、思ったが・・・ その女に記憶を読まれていたんだっけ。

どうゆうワケか日本語が通じてるみたいだし、ここら辺の詳しい状況を教えて貰わないと・・・  思い切って、疑問に思っている事を訊ねてみる。


「あの・・・ ここって、どこなんですか?」


『あなたたちの・・・知らない場所です。』


「あの・・・ やっぱり俺、死んでここに来たんですよね?」


『正確に言うと、あなたが谷底に落ちた時、二人の村人が居合わせなかったら・・

あなたは本当に死んでいました。』


「二人の村人??」


『あなたを世話していた女たちです。』


「えっ!!?」


『そして・・・あなたが目覚めるまで、約一年の月日が掛かってしまいました。』


「ええっ!!!?」


その女は、表面をピカピカに磨き上げたと思われる金属製の円盤を持ってきた。

どうやら鏡らしい。


「うそだろ・・・?」

鏡に映っているのは、俺の顔のはずだ・・・

けど・・・どう見ても、頭ボサボサで顔中ヒゲまみれ・・・に見える。

そうか・・・一年も寝たまんまだと、こうなっちまうのか・・・


『背中に貼り付けた木の葉が剥がれ落ちる時、あなた自身の体は一応動ける

ようになるはずです。 それまで、ゆっくりお休みください。』


まだ聞き足りなかった質問・・・いくつかあったはずなのに・・・

ショックで全部忘れてしまっていた。

熱の具合を測るように、テレパシー女の手が俺の額に当てられると・・・

突然、(目に見えない)睡魔ってヤツが襲ってきた。


今の俺に、対抗する術は何も無い。







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