第4話 党員#3 男のいない村 その4

白装束の巨乳女が定期的に吸わせてくれる母乳。

どうやら、すごい効能を秘めていそうな事が分かってきた。

「定期的」というのは、およそ一週間に一回ほど。

乳房が張って痛み出してきたら、俺に吸わせる・・・がパターンのようだ。

その効能ってヤツが体感できた、と確信したのが・・・その二日後だった。


その日は痛みによって叩き起こされた、と言っていい。

嫌な感じの肩こりから始まり、両腕の神経なのか、筋肉なのか、とにかく

たちの悪い痺れのような、ジンジンくる痛み。

一向に治まる気配の無いしつこさだったため、久々にキレてしまった俺は・・・

右手の拳を思いっきり地面に叩きつけた。

その拍子で壊れてしまった添え木。 と、いう事は・・・

右腕が動いた訳だ。

それはそれで、確かにぶつけた手も痛い。でも、動かせたのはその時だけ。

・・・いつの間にか、そばにいた二人の女の顔色が変わっていた。


相変わらず身動きが取れない俺。  どこかに連れて行かれるようだ。

ズルズルと、俺を乗せたソリ付きのベッドを引きずってゆく二人の女。

そう言えば・・・ 今朝から女たちは、一切の話しをしていない。

いつもの笑顔は無く、二人とも無表情だった。

( やっぱり、添え木を壊した・・・からかなあ・・・? )

その右手の添え木は壊れたまま。

何だか、腹の中をかき回されているような・・・ 言い知れぬ恐怖感。

どうか・・・夢であってほしい。


湖(?)ほとりの砂地を、もう何時間歩いただろうか?

俺を乗せたソリを引きずり、その間、全く休憩を取らない二人の女。

段々と木々が目立つようになり・・・やがて、獣道に入ろうとしていた。

鬱蒼とした草木の間を潜り抜けると・・・

二人の女の足が止まった。


どうやら、少し開けた場所に出たようだ。

目の前に、樹齢4~5000年以上はありそうな巨木が聳え立っていた。

生い茂る、緑の噴煙(木のてっぺん辺り)に見とれていると・・・

「!?」

いきなり俺の視界に割って入ってきた、二羽の巨鳥。

ダチョウやエミューのようなタイプだろうか?

俺を覗き込むように見ている。

二人の女は・・・俺の左右にいて、ヒザマズイテいるらしい。

この二羽の鳥って、いったい何なんだ?

すると、片割れの鳥が巨木に近付き、その幹を嘴で1回だけ小突いた。

ザザァーッと、どこにそんな量があったのか、崩れて流れ落ちた大量の枯葉。

現れたのは、人2~3人が余裕で入れるほどの穴。

屋久島杉や、セコイア国立公園のそれとは全く異なる。

何故か奥行きを感じさせ、それでいて変に暗く、壁が見えないのだ。

ダンジョンの入り口と言われれば納得してしまいそうな、そんな佇まい。


二人の女は、俺が乗っているソリを今度は押し始めた。

行く先は、巨木に開いている洞穴に間違い無さそうだ。

逃げようにも、今は全く身動きが取れない状態の俺。

巨乳女の乳首を吸った時に動いた首、あちこち痛すぎてブチギレ、思わず

地面を殴った右手。 それらは、たぶんマグレ・・・だったのだろう。


入り口から差し込む日の光で、寝ている体勢の俺の視界に見えたのは・・・

天井に届いてない石の壁(?)だった。

何だか “ 祭壇 ” を連想させる。

その石の壁の直前で、二人の女の足が止まった。

すぐにまた、足音がした。 だが、俺を乗せたソリは動いてない。

後ろを振り返る事ができない俺。

足音が、だんだん小さくなっていくのが分かった。


そして・・・バサッと、遠くの方から音。

それと同時だった。 俺の周囲は一気に暗黒となってしまった。

目を閉じようが開けようが、ほとんど変わらない。

「ああ・・・俺は捨てられたんだな・・・」

モンスターを静めるための生贄か、このまま朽ち果てて、この巨木の養分

となるか?は、もはやどうでもいい事に思えた。

こんな、ひどく惨めな気持ちは・・・2度目だ。



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