5-2

「まぁ…私の事なんて忘れてるものかと思ったけれど


あれだけのことをされてよく私の元にやってきたわね」



腹立たしいな…ぶん殴っていいか?


ギリ…と歯を食いしばり怒りを抑える私に比べて、リューコはかなり落ち着いてた。



「あんな傷すぐに治せる…それにあなたの作った美味しいスイーツは今でも覚えてるから


私を見ても殺人衝動は湧かないみたいだね」



どうやらリューコは実験内容をしっかりと理解していたようだ。


弥生希がこうやって隔離されているのは彼のサイコパスな行動が今はどのような状況なのかを確かめるためだった。


以前に彼はリューコの体のあちこちをナイフで突き刺した…もしかしたらリューコを見た瞬間またサイコパスな行動をするかと予想したが、どうやらそんなことはないみたいだ。


少しは安心しても良いだろうか?



「そこのわんちゃんは勘違いしているみたいだけど、私の殺人衝動はオーガの力が関係していると思うわ…。


今はそんなことする気が全く無いもの


きっとここの医療機関がしっかりと私の体調を管理してくれているみたい」



本当におかしな話だわ…そう彼は言った。


なるほど…つまりあの殺人衝動は彼自身ではなくオーガの力がそうさせていたのか。


今は力の使い方やブーストアイテムがなにかなどがわかっているから制御が可能となっているということになる



「では本題に移るとしよう…弥生希さん、君は選択することが出来る


ひとつはこの隔離された部屋で暇を持て余して死ぬこと


もうひとつはその外科医としてのスキルを利用して我々義獣人隊に入隊すること


戦闘部隊に比べて訓練は少ないが、多少の訓練は受けてもらうぞ」



私は娘以外に優しくするつもりは全く無い


睨みつけるように目を鋭くして相手を見つめると、からは冷静さを保ちながら私を見て笑っていた。



「私みたいなオカマを監視したところであなた達にも、私にも利益は全く無い…なら利益のある方を選ぶのは当然でしょ?


いいわよ、義獣人隊に入ってあげる


どうせ世間では外科医としての私は行方不明になっているのでしょ?


だったらこの名前も捨てるわ」



随分とあっさり入隊することを選んだぞこいつ…しかもその名前を捨てるなんて驚きだ。



「さすがに戸籍登録をする際に名前がなかったら困るからね


そうねぇ…元の苗字が弥生だったから今度は卯月にしようかしら?」



それ三月から四月にしただけじゃん…なんてツッコミはおいておこう


苗字が卯月なら名前はどうするのだろうか?今まで通りの希か…それとも他の名前か



「名前…新しくつけるのならあだ名つけたい


ポチが隊長の特殊部隊では皆あだ名つけてる…アンタが特殊部隊に入るのなら私があだ名つけたい」



リューコは目をキラキラさせながら言っていた


どうやらもう彼女の中には、殺人衝動を抑えられない哀れな彼はもう居ないみたいだ。



「リューコちゃん…


じゃあ私の名前は今日から卯月 鬼灯(うづき ほおづき)にしましょう!」



卯月 鬼灯


我々義獣人隊からすれば鬼の力を持ってますと全面に出しているそんな名前だな


まあそんなこと私には関係ないし、彼がそうしたいのならそうさせればいい



「鬼灯さん…青鬼はなんか違うから


うーん決められない」



可愛いな…そう思ってるのは私だけではなく鬼灯もそう思っているらしい


なんか悶えているぞ…それどころかなんかほざいている



「リューコちゃん私の養子にならない?」


「ふざけんなリューコは私の娘だぞ」



真面目な顔でほざくから焦ったぞ


睨みながら強化ガラスを殴ると、リューコが慌てた様子で止めにかかった。


まあ今回はこの辺で勘弁してやるが、次そんなことほざいたら本気で殴ってやる


そんな偉そうなことは言わなくていいか



まあとにかく今日は新たな新入隊員を歓迎するとしよう



「ようこそ…義獣人隊に


これからよろしく、卯月 鬼灯さん」

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