5-3
新たな仲間がやって来た
名前は卯月 鬼灯さん
前に私が薔宿でポチから逃げていた時にであったオカマである
その時は鬼の力のせいで殺人衝動を抑えることが出来なかったけど、今はこの施設の医療技術のおかげで大丈夫らしい
本当の鬼灯さんはとてもいい人だった
世界が認めるすごい外科医で治せない病はないと言われていた人だけど、義獣人としての適性があったから研究所で隔離されてしまったんだ。
一年前、研究所で起きた爆発事故に紛れて逃げたのは私だけじゃない
鬼灯さんもそうだったんだ
ということは私が思っているよりも多くの義獣人がまだ保護されていないのかもしれない
「…はぁ」
「…ん?どうかしたんですかリューコちゃん」
相変わらず今日も変わらずパソコンで勉強してる
今日の小テストは夕方にやるからまだ勉強する余裕はある
それなのにこうやってため息をついているのは別の理由があるのだ。
だから私は打ち明けようと思う
隣で心配そうにこちらを見ている虹色ターバンをつけてるジェリーに
「ジェリー…ジェリーってあだ名はポチがつけたんだよね?」
「えっ?まあそうですけど…
白髪に所々カラフルなメッシュが入ってるのがジェリービーンズみたいで綺麗だってポチさんが言ってくれたんですよ」
結構安直だな…でもジェリーというあだ名は彼に似合っている
「実はさ…最近衛生科に入隊した鬼灯さんがいるじゃん?
私があだ名をつける約束したんだけどなかなかいい候補がなくてさ…」
「なるほど…確か卯月 鬼灯さんだっけ?
数年前に世界的に有名な外科医としてニュースの特集にあげられていたんですよね
国民栄誉賞を受賞するかもしれないとか噂されてたけど突然行方不明になってその話は無くなったんだよね…」
そんなことがあったのか…すごいな鬼灯さん
そうなるとますますどんなあだ名をつけようか悩むな
ガシガシと頭を掻きむしりながら椅子から立ち上がると、私は方向転換をして歩き始めた。
部屋の出入口になるドアのノブをつかみ捻るとちょっと外の空気吸ってくると言って出ていった。
「……とは言ったものの、全然気分転換にならん」
溜息をつきながらフェンス越しに外を眺めていると頭上を通った影が一つ
いや、それよりももっと多くの影が頭上を飛んで行ったな
「あぁ…飛行能力を持った義獣人の飛行訓練か」
無意識に下がっていた顔を上げて見ると見覚えのある人も飛行訓練をしていた。
情報科の隊長の玲音さんは両腕を翼に変えて先頭に立っている
その隣にいるのは…ハーピィの萌奈さんかな?
「あっ…時雨さんだ」
そういえばあの時、時雨さんをお兄さんと呼ぶって約束してたのに未だに「時雨兄さん」って呼んでなかったな
なんだろう…そういうのって本当の兄とかに言うべきだと思うんだ
だから時雨兄さんと呼ぶのは違う気がする
私って…結構ずるいな
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