3-2

その存在は何度もこの目で見たことがある



「秋元源一司令官…」



白にも見える銀色の髪の毛はポチさんとは違った美しさがあって息を飲んだ


いや待て、彼は男だ見惚れている場合ではない


しかも相手は上司だぞしっかりしろ!



「どうかしたかな?」



すぐにハッとなって背筋を伸ばして立ち上がると挨拶をする


じゃないと失礼だからね



「失礼しました!


今日もお勤めご苦労さまです!」



足を揃えて自分の額の邪魔なやつを隠すようにそこに手をやった


これが僕の挨拶


敬意を持った意味のある挨拶だ



「そこまで畏まらなくてもいい


私はただ君に話しかけたに過ぎない」



司令官はそう言った


ということは僕にしか言えない大事な話をするということだ


この人はいつだってそうだ


ポチさんに頼めない仕事があればいつも僕に頼むのだ。



「僕に出来ることならなんなりと…」


「……ありがとうね」



優しく微笑む上司の笑顔は老若男女問わずに全ての人を幸せにすると思う


そのくらい柔らかい表情をしていたのだ


では着いてきなさい


司令官の言葉に従い短く返事をすると彼は歩き始めた。


その先は司令官の仕事場とも言える部屋


いつもポチさんと一緒に報告をしに行く所だ


そういえばポチさんは今頃リューコちゃんとお出かけに行くところかな?


リューコちゃんはこの基地に来てもう一週間が経つ


普段は基地が用意する服や生活用品を使ってもらってるけど、リューコちゃんだって年頃の女の子なんだ。


流行りのものや自分の好きなものを使ってもらいたい


だから司令官はポチさんに命令という形でリューコちゃんとお出掛けをしてくるように言った。


そして僕は何を命じられるのやら


ぼーっとしながら司令官の後ろについて行くと突然その足を止めてそれに続いて僕も足を止めた。


そうか、司令官の部屋に到着したのか



「わざわざここまで来てくれてすまないね


せっかく君のもとへ行ったのに渡しておきたい資料を部屋に置いてきてしまったんですよ…


今日は美味しいケーキを用意できてなかったからこの部屋には誰も呼びたくなかったんだけどね…」



そうだったのか…司令官が人を呼び出すのはそういう意味があるからなのか


全然しらなかった


司令官の秘密をまたひとつ知ることが出来た



「はいこれが資料ね


悪いけど早速取り掛かって貰えないかな?」


「はい!……ん?


あの…この内容は一体?」



受け取った資料をすぐに受け取り内容を確認すると違和感を感じた


明らかにこれはおかしい気がする



「ん?


その内容であってるよ


これから君にはその場所で義獣人の保護をお願いしたいんだよ」



いや、確かに義獣人の保護ならいつもの事だからすぐに向かうことは可能だ


だけど気になるのはターゲットがいると思われる場所だ


ここって確か……



「(今日ポチさんとリューコちゃんが買い物をしに行く場所じゃないか…!)」




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