3-1

何かを求めるために人は物事において集中して全力で取り組む


精神を研ぎ澄ませて集中し、目の前にあるターゲットに視線を移すのだ。



息が少し乱れたのなら深呼吸してそれを整えればいい



落ち着け…落ち着くんだ私


そうすればこの事態もすぐに対処出来るんだ




「フゥ……いざ…!」




この目の前に出された難題を解くために私は











右手にフォークを持った











「何をカッコつけてんだよ…


さっさとそのニンジンを食べなさいよ」


「痛っ!?


なにをするんだポチ…私は今からこのニンジンを食すために神経を研ぎ澄ませて……」



ニンジンをフォークでさす右手が震える…それは隣にいるこいつも同じようだ


隣にいるポチの皿に残っていたのはバナナだった。



「ははっ…まさか親子揃って苦手な食べ物残すとは!


笑いすぎてお腹が痛いですよ!」



その様子を見てるニコとジェリーはずっと笑ってた


そこまで余裕があるのならこのニンジンくらい食べてくれてもいいものを…何故こいつらは笑っていられるのか



「カッカッカ~!


ニンジン食べれないのが許されるのは5歳までだぞリュウのガキ~


ポチさんもバナナくらい食べれるようになりましょうよ」


「ニッ…ニコさん、それは言ったらダメ……」



なんだろう…


ニコに対してイライラしてきた


あそこまで私とポチを煽ってくるなんて命知らずにも程がある



「ポチ…私いいこと思いついたんだけど」


「奇遇だなリューコ…


私もいいことを考えたんだ」



ふふふと2人で笑いながら手に自分の苦手なものを持つとニコの肩を両方からがっしりと掴んで逃がさないようにした。



「えっと…ポチさん?リュウのガキぃ!?」



まだ彼が人の名前を呼んでいる途中なのにあえてそのタイミングで彼の口を塞ぐ私達


彼の口の中パンパンに詰められたニンジンとバナナはとてつもない甘さのハーモニーを奏でているとかなんとか


特にニコは甘いものが苦手だ


そしてこの甘く煮込まれたニンジンと元々甘いバナナは彼にとってはショックの大きい物だったらしく



「ニコさん!?


あぁもう言わんこっちゃない!」



ジェリーに担がれてどこかへ運ばれて行った


本当にあいつは何がしたかったんだろう…理解出来ない


まあお陰様で皿の上はからっぽでようやく食堂から出られる


何故そこまでして完食にこだわるのか


それはここの食堂の料理作ってる人もまた義獣人だからな…残したら怒られてかなり痛い拳骨をくらうから皆それを恐れて完食が当たり前になってしまったのだ。



「とりあえず今日も1日頑張ろう…ニコという屍を越えて」


「そうだね」



ニコがいるから今の私達がいる


それを忘れずに今日も生きていこう










その頃ニコは



「(俺はまだ死んでねぇぞ)


気持ち悪い…」


「これからはポチさんとリューコちゃんを馬鹿にするのはやめてくださいよ…」



ジェリーに介抱されていた。



今回の1番の被害者はジェリーだったという




「まったく…どうして僕ばっかり」












「君かジェリーくんは


いや、浅倉仁」



名前を呼ばれて振り返るのは人間の性


その時の彼は振り返って目を丸くした


そこにいた人物はあまりにも高貴な存在に見えて

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