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外の風が私の頬を撫でてきた
屋上にあるこの墓石だらけのここは同士が安らかに眠る場所だ。
戦場に召集され死んだ者や寿命をまっとうした者
そしてその強大な力を悪に使った者
敵味方関係なしに義獣人達が眠る場所だ。
私は時々ここに来ては自分の思いを吐き出している
なぜならここは…
「やっほー…また来ちゃった
今日来たのは、新人についての話なんだ…。
だから聞いてくれる?
お父さん」
かつての私の上司であり最も尊敬出来る存在が眠るこの墓があるからだ。
週に一回この墓場に来ては綺麗に掃除をすると花と彼の好物を一緒に供えているのだ。
「今日、司令官にその新人について報告をしてきたんだ。
表向きにはその新人の存在は大きな利益になる……って言ったのに司令官はそれは本音じゃないと見抜いたんだよ!
実は私ね、その新人の親代わりなんだよ
その子はリューコっていって13歳の未成年でまだ親の力が必要でさ…私があの子の親になるって言ったからその義務を全うしなきゃいけない………と思ったんだ。
だけどあの子がそれを望むかなんてわからない…」
私はリューコと自身を重ねてしまったのだ
家族もいないし孤独を知っている…そして子供時代に義獣人にされてしまった苦しみがある…。
「子供時代に義獣人にされた私を救ってくれたのはお父さんだったんだよ
それが私にとっては泣きそうなくらいすごく嬉しくて毎日お父さんの後ろについてきては怒られてたな…。」
だから私は思ったんだ
リューコにも同じようにしようと
かつて元隊長が私に色々と教えてくれたくれたように
私もリューコに色々教えよう
勉強だけじゃなくて生き残る術とか、仲間と一緒にいることの大切さとか…
「お父さん…天国でその様子を見ていてくれませんか?」
私はあなたのようにリューコを育てられるかはわからない
だけど頑張ってみせるよ
最後に手を合わせてそう言うとより一層風が強くなった気がした。
まるで誰かがこの様子を見ていて私にエールを送ってくれてるみたいに
「お父さん…私も近いうちにそっちに行くかもしれない
だけど勘違いしないでね!
やること全部やってからそっちにいくから!」
さてと、帰るとしよう
その場から立ち上がり服に着いた土汚れを落とすとクルリと入口のドアの方を向いた。
私はあなたを忘れたことなんて一度もない
この命が尽きるその時まであなたの事を覚えているから…
だからあなたも忘れないで欲しい
そんな決意を知っている者は誰もいない
強いて言うなら今そこで世界を照らしている太陽くらいだろうか
そんなことよりも早く仕事場でもあるオフィスに戻ろう
ジェリーに預けたケーキを食べているリューコの顔が見れないからな
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