2-3
「君は本当にそう思ってるのかい?」
うちの司令官は人の心を暴くのが得意のようだ
私がリューコのことを大きな利益だと考えていると思っていないようで…
確かにそうだ
私はリューコの存在はこの先とても大きくなるとは考えている
だけど利用するべき存在ではないとも考えているのだ。
「…正直に言うと、私は彼女を義獣人隊に入れてもいいのか迷っています
今はまだ仮入隊の状態ですが、義獣人でもある彼女はいずれこの部隊に正式に入らないといけない
それに私は彼女の親代わりとして育ててはいますが不安だらけです…。」
心の中にある本音をそのままいえば、横で心配そうに見つめるジェリーがいた。
大丈夫だよ
そう視線で伝えれば彼は前を向いて静かに紅茶を飲んでいた。
「そうか、それが君の本音というわけか…。」
だからなんでわかるんだよ
恐怖をこえてため息が出てしまううな司令官の発言は無視して私は資料を渡してソファから立ち上がった。
「私は彼女にどう思われようと、親代わりとしての義務は全うします。
それだけは忘れないでいて欲しいということを頭に入れていただけると幸いです。」
私の決意表明は相手に伝わっただろうか
たとえ伝わってなかったとしても私だけがわかっていればそれでいい
私はリューコの親になってやる
もしそれを彼女が望んでいなかったとしても
「ふふ…では彼女の養育費は経費で賄いましょう
必要経費ですからね」
どうやら司令官には私の想いが届いたらしい
にっこりと笑って飲んでた紅茶をテーブルに置くと全く手のつけられなかったケーキを箱に詰めて私たちに差し出してきた。
「五十嵐灯にあげなさい…
彼女の動力源は糖類なのだろう?」
本当にこの人は優しい
人に何を与えればどう動くかなどをしっかりと理解して飴と鞭を使い分けることが出来るのだから。
「……ありがたくいただきます
きっと司令官もうちの子を気に入ることでしょう」
失礼しますと言ってその部屋を出ていくと少しだけ早足で廊下を歩いた。
「ちょっ…ポチさん速いですよ!
いくらリューコちゃんにそれあげたいからって…」
ジェリーの言葉に反応して足をピタリと止めると私は少し考えた
「ジェリー…私はそんなにわかりやすいのか?」
そんなに顔に出ていたのだろうか?
そんなに行動に出ていたのだろうか?
少しわからなくなっていた
リューコは私によく似ていた
ずっと1人で孤独を感じていた…だから私はリューコのためになにかしてやりたいという私のエゴを押し付けているのかもしれない。
私は…リューコにとっての何なのだろうか?
「ジェリー…悪いがリューコにこれを届けに行ってくれないか?
ちょっと行かないといけない場所があるからさ…」
「えっ…ちょっとポチさん!!」
手に持っていたケーキの入った箱を後ろにいたジェリーに押し付けると私はリューコとニコがいるであろう運動場には向かわずに人気のないある場所に向かっていた。
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