第104話 case104

2人がゲートをくぐり、集会所に着くと同時に、辺りに耳を劈くような警報音が鳴り響いていた。


りつ子は2人を見るなり「あんたたち遅い!! 全ハンターに緊急招集がかかってるから早く行って!! シェルターが壊されたのよ!!」と怒鳴りつける。


「シェルターが? 場所は?」


「研究所の裏! いきなり大爆発が起きたって! 今、賢者たちが対応してるけど、数が多くて危ないっぽい!!」


くるみは全身の血が引いていくのを感じ、慌てて飛び出そうとしていた。


「姫野待て!! これを持っていけ!!」


教師は慌ててくるみを呼び止め、リングとチョーカー、ブレスレットと大量のマナポーションを差し出した。


「アクセはセット効果があるから、終わったら必ず返せよ。 ポーションは返さんでいい」


くるみは小さく笑った後、預かったアクセを身に着け、インベトリから凍ったグリフィンの頭を出し「宝物だから預かっといて! 後で取りに来るわ」と言い、風を使って飛び出していた。


置いて行かれてしまった亮介は、教師から場所を聞いていると、ダンジョンから葵と千鶴が出てくる。


「亮介君、この警報音何?」


葵が不安な表情のまま聞くと、亮介は「お前も来い」と言い、葵を連れて外へ飛び出した。


集会所の外に出ると、以前よりも大きな体になっているゴロが亮介と葵の前に立ちふさがる。


「お前と遊んでる暇はないんだよ」


亮介が言うと、ゴロは亮介の足の間に潜り込み、更に体を大きくしていた。


「…連れて行ってくれるのか? 葵、乗れ!!」


亮介は戸惑ってなかなか乗ろうとしない葵の首根っこを掴むと、ゴロは勢いよく走り出す。


亮介は葵をゴロの背中に座らせた後、幻獣のステッキとローブを葵に手渡した。


「こ、これ…」


「うちのギルドに誘われたんだろ? うちのギルド、かなり無茶する奴が1人いるから、それくらい無いと戦えないんだよ」


葵は亮介の言葉を聞き、急いで幻獣装備を身に纏った後、しっかりとゴロの背中を掴んでいた。




ノリとセイジは研究所の屋上から魔獣の群れを眺めていた。


シェルターの割れ目からは、ぞろぞろと大量の魔獣が押し寄せていたが、等間隔に並んだSランクギルドのウィザードたちが、両サイドから風を起こし、魔獣たちは自然と列を作って突き進んでくる。


「うっは~~! すんごい数!! キマイラとグリフィン、ミノタウロスとコカトリス、あとなんだあれ?」


ノリは感心したように声を上げ、見たことのない大きな人型をした魔獣を指さしていた。


指さした先には、下半身が蛇になった半裸の女性が、氷の魔法を唱えていたが、氷の魔法は風に跳ね返され、魔獣の群れの中に消えて行った。


「ラミアだ」


セイジは眼鏡を押さえながら答えると、ノリが「あっちは?」と、指さしながら聞いてくる。


ノリが指さした先には、ローブを身に纏った骸骨が、ワンドを振り回し、ウィザードたちに雷を落としていたが、すぐさま背後にいたヒーラーたちが回復していた。


「あれはシュウヤだろうな。 魔獣化しやがったか…」


「食われたんじゃないの?」


「魔獣は骨まで食わん。 食うのは肉だけだ」


「ラミアはなんであんな肉付き良い訳?」


「まずくて食えなかったんじゃないか?」


「あら。 以外に美食家なのね」


ノリがそう言うと、太一が下から大声で呼んでいた。


「行くか」


セイジがそう言いながら階段の方に行こうとすると、空からくるみが降り、ノリは歓喜の声を上げていた。


「ナイッス~」


「父さん見なかった?」


くるみはノリの言葉に返事もせず、2人に聞くと、ノリは「そこにいるよ」と指さした。


そこには、ウォーリア賢者の横で、必死に炎の魔法を放っている父親の姿と、その背後で補助魔法を放っている母親の姿が視界に飛び込んだ。


くるみは2人の姿を確認した後、ノリとセイジを抱えて空へ飛び立ち、母親の後ろに降り立った。

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