第105話 case105

セイジとノリを抱えたくるみが母親の後ろに降り立つと、セイジとノリは背筋を伸ばして手を後ろに組んだ。


「戦闘態勢に入れ」


前線の魔獣を燃やし尽くした父親がそう言うと、2人は「イエッサー」と言い、武器を構える。


遅れてきた太一は、2人の姿を見て武器を構えた。


すると、ウォーリア賢者が「おう小娘! こりゃなかなか手ごわいぞ」と言い、待ち構えるように武器に力を籠める。


くるみはマナポーションを飲んだ後、父親の隣に並んだ。


「あと10メートル進んで来たら、一気に総攻撃を仕掛ける」


父親が言うと、くるみはアックスを担ぎ「押し返しちゃえばいいじゃん」と、普通に聞いていた。


「人手が足りない」


「そ。 じゃあ時間稼ぎするわ」


くるみはそう言うと、風を使って10メートル先のボーダーライン上に立ち、幻獣装備に身を包んだ後、炎のエンチャントをかけ、その場でグルグルと回転し、今までよりも大きな炎の竜巻を起こしていた。


「バカな!!」


父親と母親だけではなく、賢者たちはくるみの型破りな戦闘方法に呆然とし、ウォーリア賢者は大声をあげて笑っていた。


くるみは大きな炎の竜巻を起こした後、勢いよく飛び上がり、ゲートの割れ目に向かって強風を起こす。


すると、大きな炎の竜巻は、次々に魔獣を吸い飲んでは燃やして進み、炎の道を作り上げ、両サイドから吹く強風を受け、魔獣たちを燃やし巻き上げながら、その場に止まっていた。


くるみは父親の隣に降り立つと、マナポーションをグビっと飲み干し、「あと30メートルになったよ?」と告げていた。




「亮介君、あれ! 炎の竜巻だ!!」


亮介は葵に言われ、指さされたほうを見ると、建物の奥に炎の竜巻上がっていた。


「あそこだ!! ゴロ! 竜巻の方へ向かえ!!」


亮介が叫ぶように言うと、ゴロは体勢を低くし、更にスピードを上げていた。




「な、何故こんな真似が?」


父親が呆然としながら聞くと、くるみは平然としながら答える。


「炎属性に炎のエンチャントすると、猛炎になるかなって思ったら出来た! 賢くね?」


くるみが得意気に言うと、風の隙間を縫って飛び立った鳥の魔獣が襲い掛かってきたが、ウィザード賢者とマジシャン賢者が炎の魔法で焼き尽くす。


しばらくすると、炎の竜巻が消え、魔獣の群れはクルミたちに向かって前進をしてきた。


太一とタンクナイト賢者、Sランクギルドのタンクナイトたちが最前線に立ち向かうと同時に、セイジがくるみに紺色の小手を手渡してきた。


「これがあれば毒を食らわない。 装備しとけ」


セイジに言われ、くるみは小手を装備した後、アックスを担ぎながら父親に「修復作業ってしてるんだよね? 行かなくていいの?」と聞くと、父親は「問題ない。 こっちが優先だ」と答える。


すると、ゴロに乗った亮介と葵が、くるみたちの背後に着くなり、葵は全員に防御力アップの魔法をかけた。


ヒーラー賢者はそれを見て「ほう… 到着するなり全員に補助とは感心じゃのぉ」と言い、立派な髭を撫で始める。


ノリとくるみ、亮介とセイジが太一の背後に行こうとすると、葵はスピードアップの補助魔法を4人にかけ始めた。


「さっき覚えたばかりだから、長時間の効果は期待できないけど… 終わったらご飯作るから食べに来てね!」


葵はステッキを握り締めながら言うと、4人は足を止めてクスっと笑い、ノリが「材料拾って来るわ。 みんなでバーベキューしよう」と言い、4人は再度歩き始めた。



「立派ですね。 あの子たち」


くるみの母親がそう言うと、ヒーラー賢者はクスっと笑い「おぬしも昔の血が騒いどるんじゃないのか?」と、父親に声をかける。


するとウォーリア賢者は「がはは」と笑った後「騒がない訳ないよなぁ」と言いながら歩き始め、亮介の横に着いた。


「我慢してないで行ったらどうです? 娘の横に」


くるみの父親は拳を握りしめ、大きく息を吐いていた。

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