第103話 case103

ダンジョンから出た後、くるみはセイジにこっぴどく怒られ、落ち込みながら帰宅していた。


翌日、学校ではペアダンジョンの実戦訓練があり、自分の周りに人だかりが出来てしまったことに、悠馬が誘ってきたことで、更にくるみを落ち込ませていた。


バスに乗り込み、りつ子のいる集会所に向かい、教師の説明を受けた後、くるみは当たり前のようにりつ子の前に座るが、人だかりもついて来てしまっていた。


りつ子は久しぶりに見たくるみを前にし「A+ランク様じゃないのぉ~。 久しぶり!」と言いながら、飲み物を差し出す。


くるみは挨拶をしながら魔法石を渡し「やっぱりこっちの方が落ち着くねぇ」とシミジミと言い、りつ子は「慣れもあんじゃない? と言うか、あんたの周り、相変わらず女の子だらけね」と言いながら笑っていた。


すると、人ごみをかき分けた亮介がくるみに近づき「行こうぜ。 黄色信号出てたから2重になるかもよ?」と珍しく声をかけ、くるみは「しゃーねーなぁ」と言いながら立ち上がった。


ゲートに入ると同時に、亮介が「ここのボス、炎だから氷にしたほうが良いぞ」と声をかけ、くるみは凍結のアックスと凍結の鎧に身を包んだ。


少し歩くと、亮介がついて来ていないことに気が付き、くるみは後ろを振り返った。


「どうしたの?」


「最高に似合ってる」


「からかうな!」


くるみはそう言いながら顔を赤くしていると、亮介はくるみの前に立ち「好きだ」と声をかける。


「な、何言ってんの?」


「本心。 ヒーラーになる前、毎日回復してくれてただろ? あの時からずーっと好きだった」


「そ、そんな昔の事忘れた!」


「俺は忘れてないよ。 くるみは毎日、俺に回復かけながらどう思ってた?」


「そ、そんなのわかんないよ… 毎日魔力が枯れてたし…」


「マジックウォーリアになってからは?」


「わかんない! さっさと行くよ!」


くるみがそう言いながら先に行こうとすると、亮介はくるみの腕を掴み「言うまで行かない。 俺が行かないと出れないだろ? 本心言うまでここを動かない」と言い切っていた。


くるみは赤い顔のまま、少し考えた後、諦めたように小さな声で切り出した。


「亮ちゃんは… 頼れる人で… 守ってくれる人で… 良いライバルで… えっと… 優しいし… 同じギルメンだし… 隣で戦ってくれる人だし… んと… 強いし… えっと… も~~!! あたしの中の王子なの!!」


「王子? もしかして王子って呼んでた?」


「うっさい!」


くるみが怒鳴るように言うと、亮介はくるみを抱きしめた。


「好きって捉えてもいい?」


亮介に囁くように言われ、くるみは黙ってうなずくと、亮介は腕に力を込めた。


「やべ… マジ嬉しい… 出たくなくなった」


「…2重なんじゃないの?」


「うん。 黄色信号出てた。 このまま戦えないかな?」


「無茶言うな」


2人は少し笑い合った後、触れるだけのキスをし、手を繋いでダンジョンの奥に向かって行った。


ダンジョンのボスを倒した後、金色の蝶が舞い、ゲートを開いていく。


「あれ? 2重は?」


「でないな。 誤信号かな?」


2人は不思議に思いながら、ゲートの中をくぐっていた。

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