第102話 case102

くるみはマナポーションを飲んだ後、自分の足で歩き始めていたが、徐々に足場は狭くなっていった。


全員が横を向き、岩に沿って歩いていると、先頭を歩いていたセイジの足場が勢いよく崩れ、一瞬にして姿を消していた。


が、くるみが咄嗟に風で飛び上がり、セイジを少し広くなった場所まで連れて行くと、くるみはまたしてもボーっとしてしまった。


『これはマズイな… また誰かが落ちたら危険すぎる…』


セイジは仕方なく、最後のポーションをくるみに飲ませ、細心の注意を払いながら、3人を誘導し、歩き進めていた。


しばらく歩いていると、下の方にさっきの巣があることに気が付き、くるみが太一に声をかけた。


「さっきの巣だ。 3匹もいるけど、あそこに固まって寒そうにしてない?」


「産毛が少なかったし、結構上ってきたから寒いんだろうね。 本来なら親鳥が温めてるはずなんだけど… 餌でも取りに行ったのかな?」


くるみは「ふーん」と言った後、インベトリから大量の魔獣の皮を出し、巣に向かって優しく放り投げていた。


ノリと太一も一緒になって、巣に向かって魔獣の皮を落としていると、遠くの方で黒く大きな鳥と、紫色の大きな鳥が争っているのが見えた。


「あの黒い鳥、雛を狙ってるんだ。 だから親鳥が居ないんだね」


太一が呟くように言うと、セイジが「早くいくぞ」と声をかけ、3人は後ろ髪を引かれるように先を急いだ。


しばらく歩くと、セイジが「やっと頂上だ」と声をかけ、5人は先を急ごうとする。


が、次の瞬間、黒い鳥がひな鳥を目掛けて一直線に飛び立ち、くるみは咄嗟に氷の魔法を放った。


黒い鳥は一瞬にして氷漬けになった後、その場で弾け飛んだが、くるみもまたその場に座り込んだ。


「ば、バカ野郎!! これからボス戦だろ!!」


思わずセイジが怒鳴りつけたが、くるみは弱弱しい声で「…ごめんなさい」と言うだけ。


紫色の親鳥は巣の中に入り、雛たちを温めながら5人を眺めていた。


「仕方ないな…」


セイジは呆れながらマナポーションを渡し、くるみがそれを飲み干し、残すマナポーションが0の状態で頂上へ向かう。


頂上に着くと、ボスの代わりに金色の蝶が舞い踊っていた。


「あれ? もしかしてあの黒いのがボスだったのかな?」


くるみがキョトーンとした表情のまま言うと、太一が「素材と魔法石!! ここS級だから激レアだよね? 魔法石も多いよね?」と大声を上げた。


くるみが「取ってくる!」と声を上げると、セイジは眉間に皺をよせ「マナ切れの癖に… 帰れなくなるぞ?」と聞き、4人はがっかりと肩の力を落としていた。


仕方なく、ゲートに向かおうとすると、さっきの親鳥がゆっくりと降り立ち、足で掴んでいた素材と魔法石を置いた後、再度飛び立ってしまった。


「え? 持ってきてくれたの? ありがと~」


くるみは飛び立った鳥の背中に向けて、大きく手を振りながら大声で言い、素材を回収した後、5人でゲートの中へ入って行った。


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