第74話 case74

爆発が収まると同時に、セイジは氷の壁を解き、くるみとノリを含めた4人は、武器を構える。


冷気が徐々に収まり、中の様子がわかると同時に、視界に飛び込んできたのは、以前よりもはるかに大きく、黒いキマイラだった。


「こいつ嫌い」


くるみが言うと、セイジはクスっと笑い、「例のキマイラの親かもな」と言った後、指示を出す。


「姫と亮介は蛇、ノリと俺でヤギをやる。 太一はとにかく耐えろ」


「俺だけ雑なのは気のせい?」


「いつものことだろ。 素材は山分けだ良いな?」


素材と言う言葉を聞き、太一と亮介の目が光る。


「イエッサー!マスター!!」


4人が返事をした直後、黒いキマイラは咆哮を上げ、太一に向かって飛びかかる。


太一が攻撃を受けようとした瞬間、太一に補助魔法がかかり、太一は難なく攻撃を受け止めていた。


「ぼくちゃんナイス!!」


くるみはそう叫びながら蛇に向かって飛びかかると、不思議な力で弾き飛ばされ、壁に体をぶつけた後、回転しながら着地する。


くるみが着地した直後、蛇は牙をむいてくるみに襲い掛かろうとしたが、亮介が大剣で攻撃を弾き飛ばし「大丈夫か!?」と、前を向きながら叫ぶように聞いてきた。


ノリは、セイジの魔法の隙間を縫うように移動し、ヤギの角めがけて飛びかかろうとするも、不思議な力で弾き飛ばされ、壁の中に足を埋めてしまう。


「このヤギ、物理が効かない!!」


「この蛇、魔法が効かない!!」


2人の声が綺麗にハモると、セイジは「いきなり飛びかかるな!!」と怒鳴りつける。


くるみは攻撃を避けながら「この前のキマイラと逆?」と大声で聞くと、セイジは眼鏡を擦り上げ「弱点が交互に移動してる! 弱点属性もころころと変わっているぞ!」と大声で答えた。


「そんなんどうすりゃいいの?」


「幻獣装備があるだろ! あれで蛇を落とせ!!」


「イエッサー!! 亮ちゃん!どいて~!!!!」


くるみはそう言うと、氷のアックスに持ち替え、亮介が移動した後にアックスを放り投げる。


氷のアックスはブーメランのように大きく弧を掻き、蛇は釣られるようにアックスの方を向いている。


が、氷のアックスは蛇の直前で軌道を変え、くるみは慌てて手をかざす。


するとアックスは、勢いよくヤギの角を弾き飛ばし、ヤギの頭は激しく暴れだし、2つの頭と胴体は、ヤギの頭に引っ張られていた。


「上手い!!」


ノリはそう叫びながらヤギに飛びかかると、どこからか補助魔法が飛んできて、ヤギの首を跳ね飛ばした。


「ナイス!!!」


くるみはそう言いながら幻獣アックスを手にして風で飛び、蛇の注意を引きつつも、反対側に移動し、壁を蹴って蛇を目掛けて一直線に飛ぶ。


蛇はくるみに向かって牙を向けると、亮介の大剣が蛇の背後から首にめり込み、亮介はバックステップで距離を取る。


くるみは勢いを止めずに加速し、そのまま首を目掛けてアックスを振りぬき、蛇の首は切り飛ばされた。


「どいてええええええええ」


亮介がくるみの声で顔を上げると、くるみは弾丸のように亮介に向かって飛んでくる。


「バカ!!」


亮介はくるみを受け止めたが、激しい爆音と砂煙を立てて、壁の中に消えてしまった。


「姫! 亮介!!」


セイジが怒鳴るように叫ぶと、黒いキマイラは動きを止めて目を閉じ、威嚇するように牙をむく。


すると、ヤギと蛇が居た部分が、内部からうごめき始めた。


「まさか! 再生するのか!?」


セイジが大声で叫んだ瞬間、ノリがライオンに向かって飛びかかり、援護するようにセイジが光の魔法を放つが、2人の攻撃は弾かれてしまう。


「物理も魔法も効かないだと…?」


3人は黒いキマイラを前に、呆然と立ちすくむことしか出来なかった。

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